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2014年05月01日(Thu): 4-9.姿勢決定・制御系設計

Category: SPROUT Master
Time: 14:51
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで23日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.
SPROUTマスターになろう!本日は姿勢決定・制御系の設計についてご紹介します.

姿勢決定・制御システムは,姿勢決定をするための太陽センサ,地磁気センサ,ジャイロセンサなどの姿勢を検出するセンサや,姿勢制御をするためのアクチュエータとなる磁気トルカ,姿勢決定・制御の演算処理をするためのMPUなどのハードウェアで構成されています.
ADCシステム図


姿勢決定・制御システムは,ハードウェアだけではなくソフトウェアの設計もしっかりしていかなければなりません.以下,ハードウェアの設計と,ソフトウェアの設計についてご紹介したいと思います.

【ハードウェアの設計】
■磁気トルカ
磁気トルカは,日大で自作を行っています.まず,磁気トルカの設計をするにあたり,出力が外乱に打ち勝ち,姿勢制御が行なわなければなりません.宇宙空間では,大気抵抗トルクや,太陽輻射圧トルク,残留磁気トルクなど,様々な外部からの力(外乱)が加わります.そのため,外乱がどれぐらいの大きさになるのかを見積もり,それに打ち勝つ強さをもった磁気トルカを製作します.

磁気トルカはコア材にコイル線を巻き付けることによって製作します.ここで,ムラなくコア材にコイル線を巻き付けることが重要となります.そこで,巻線機を自作し,それを用いてコア材にコイル線を巻き付けることにしました.
巻線機


手動でコイル線を巻くこともできますが,巻線機にはモーターが取り付けられているので,コア材を回転させることによって,コイル線を自動で巻くこともできます.
こうして,SPROUTの磁気トルカが作られました.
磁気トルカ


■太陽センサ
太陽センサも,日大で自作を行っています.
太陽センサ


太陽センサの検出角は,誤差の大きさなど,色々と検討を行った結果,±55[deg.]となりました.衛星からみた全方向を検出できるようにカバーしなければなりませんので,CADを用いて,全方向がカバーできるように太陽センサを配置しました.
太陽センサ検出角太陽センサ検出角


こうして,太陽方向をすべて検出できるように太陽センサと配置が考えられ,設計されていきました.

【ソフトウェアの設計】
ソフトウェアに関しても,きちんとした設計が必要となります.姿勢決定・制御系では,姿勢制御の演算処理を行なう必要があります.磁気トルカは小さい力しか出すことができないので,宇宙空間では制御することができますが,地上での検証が困難となります.そのため,姿勢シミュレータを自作し,何度も姿勢シミュレーションを行うことによって,ソフトウェアに反映することを繰り返し,ソフトウェアを作り込んでいくことになります.
ソフトウェア設計の流れ


そのため,下図のような構成で,姿勢シミュレータの自作を行いました.
姿勢シミュレータ


姿勢シミュレータを作るにあたり,各プログラムの箱の入力と出力を明らかにする(例えば,姿勢制御則の入力は姿勢角で,出力は磁気モーメントなど)ことによって,完成したプログラムの箱をそのままSPROUTに反映させます.

また,SPROUTの姿勢決定・制御系の開発言語はC言語なのですが,姿勢シミュレータも同様にC言語で作ることによって,シミュレータで作られたプログラムをそのままSPROUTに反映させることができるようになっています.

一例として,衛星の回転を抑制させるデスピン制御のシミュレーション結果を紹介します.
デスピン制御


地上では実機を用いた検証が難しいため,このように数値計算で衛星の運動をシミュレーションしてあげます.このように,シミュレーションがうまくいったプログラムが,SPROUTに搭載されることになるのです.

以上,姿勢決定・制御システムの設計の紹介でした.
このように,色々と試行錯誤の末,姿勢決定・制御システムが作られてきました.まだ数値計算上でした姿勢制御が行なえていないので,実際の宇宙ではどのような運動をするか,どきどきしています.

明日は,データ処理系設計に関して,修士2年の三田さん宜しくお願いします!

2014年05月02日(Fri): 4-10.データ処理系設計

Category: SPROUT Master
Time: 18:46
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで22日です!】
皆様,こんにちは.
修士2年の三田です.
SPROUTマスターになろう!
本日はデータ処理系の設計についてご紹介します!

皆様お気づきかと思いますが,SPLOGでのSPROUT紹介では番号がついていたのです.
No.0は概要
No.1はアマチュアミッション
No.2は膜面展開ミッション
No.3は姿勢決定・制御ミッション
といった感じで...
そして現在のNo.4は衛星の設計について書いてきております!
SPROUTの全体システムから始まり,各サブシステム設計と説明してきました.
それではデータ処理系の設計について説明致します!
SPROUTのミッションである膜面展開,姿勢制御,アマチュアミッションはINF,ADC,CAMなど色々なシステムがセンサデータや画像を取得しております.そのセンサデータや画像,さらにはハウスキーピングデータ(衛星の状態を表すデータ)を処理しているのがCDH(データ処理システム)になります.CDHで各システムが取得したデータを受け取り,メモリに保存し,送信機にデータを送ることを目的としています.また,FMRが地上局から受信したコマンドを各種サブシステムに命令送信する役割も担っています.
データ処理系システムでは衛星時間をカウントするRTCシステムも搭載しています.RTCでは衛星放出後からの衛星の時間を計測し,さらにはSPROUTに搭載されている全MPUのリセット回数を数えることをしています.各システムの繋がりは全体システムの回を参照して頂ければと思います.
SPROUTでは各系のシステムが専用のFEPROMを搭載しています.各システムが直接ダウンリンク出来るわけではないため,各システムで取得したデータをダウンリンクする際にはROM間のデータ移動が必要となります.

ROM通信


CDHには工学ミッションを行うCDH1とアウトリーチミッションを行うCDH2と2つのデータ処理システムがあります.2つのシステムはデータ処理を行う意味では同じなのですが,CDH1では9600bpsでのダウンリンクが可能であったり,CDH2ではデジトーカやSSTVといったようにCDH1,2それぞれにユニークな機能が搭載されています.データ処理系に共通していることはアップリンクからダウンリンクまでを管理しています.
①地上局よりコマンドをアップリンクする.
②FMRにてコマンドを受信する.
③CDHがコマンドを判別,コマンドに応じて各マイコンに命令を送る.
④CDHがダウンリンクコマンドを受け取った場合は,FM送信機よりデータを送信する.
といった具合にデータ処理がなされています!

一連の流れ


各システムが取得したデータを地上に送るデータ処理システムの簡単な説明でした.
明日はNo.4の最後,インヒビット設計について修士2年吉野が説明します!
SPROUT CDH班 Mita

2014年05月03日(Sat): 4-11.インヒビット設計

Category: SPROUT Master
Time: 18:06
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで21日です!】
皆様,こんにちは.修士2年の吉野です.
SPROUTマスターになろう!
本日は「インヒビット設計」についてご紹介します.

そもそもインヒビット“inhibit”は、【inhibit:抑制する、妨げるetc.】という意味ですが、
SPROUTのインヒビット設計について言えば代表的なもので、
●衛星電力供給
●アンテナ展開用ニクロム線電源供給
●SMAバルブ回路電源供給
●(分離機構電源供給…これについてはまた明後日!)
これらの動作に対して、打ち上げ時の不意な誤動作を抑制する設計の考え方を指します。

SPROUTはH-IIAロケットの相乗り衛星として搭載され打ち上げられますが、その打ち上げの際に生じる振動・衝撃等によって衛星搭載機器が故障した場合、不意な誤動作(電波発生・膜面展開)が発生、その結果ロケットや他の主・相乗り衛星の損傷・破壊につながることが考えられます(そうならないように今まで環境試験で確認してきました)。その際の冗長設計としてインヒビット設計を組み込んでいます。これらは衛星側・ロケット側からの要求をまとめて、システムの安全性の確認として設計・実験を通した評価を行ってきました。

●アンテナ展開用ニクロム線電源供給
衛星に電源供給されるとアンテナ展開用のタイマーIC×4が作動・数分カウントした後の出力信号によりアンテナ展開動作を行う仕組みになっています。またアンテナを取り付けているワイヤーを2系統備え、2系統すべてをニクロム線から成る溶断機構により溶断しアンテナが展開します。

●SMAバルブ回路電源供給
SMAバルブの電源供給には①衛星への電源供給、②INFマイコンへの電源供給、③INFコマンドによるSMAバルブ電源供給、のインヒビット化によりハザードを抑制しています。

●衛星電力供給
打ち上げ時に衛星のシステムが起動しないように、分離機構からの放出を検知するスイッチ(放出検知スイッチ)を3つ搭載し、全スイッチがONになることで初めて衛星への電源供給が可能になります。また振動・衝撃試験中においてはこれらスイッチの開閉状況を確認する試験も行います(これについては環境試験紹介の時に)。


以上インヒビット設計についてでした。今回までは衛星の設計について紹介させて頂きましたが、明日・明後日の2日間は衛星を軌道上に投入する分離機構”N-POD”についてご紹介いたします。

2014年05月04日(Sun): 5-1.分離機構 概要

Category: SPROUT Master
Time: 22:54
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで20日です!】
皆様,こんにちは.昨日に引き続き修士2年の吉野です.

SPROUTマスターになろう!
今日からの二日間は、衛星を軌道投入する独自開発のPOD型分離機構”N-POD”について、全体概要と詳細設計(明日)についてご紹介いたします。

■独自開発分離機構“N-POD”


一般的に、人工衛星はロケットに搭載された後各衛星が投入される高度まで運搬され、各高度到達後軌道投入されます。その中で、今回設計開発したN-PODは衛星を軌道上へ放出することがミッションになっています。

■N-POD概要
①衛星収納から放出までの流れ
衛星は分離機構側面から収納し、展開蓋を保持展開機構(HRM)によって固定した後ロケット側へ引き渡され、ロケット内部に取り付けられます。打ち上げ後ロケットからの電気信号をもって蓋の保持展開機構を動作、最終的に内部にある押し出しバネによりびっくり箱の要領で衛星を押出して軌道上に投入します。

②設計開発
構造的には打ち上げ時の振動・衝撃にも耐えられるよう頑丈で変形しづらい材料・機構で設計し、衛星押出し時の分離速度の減衰を小さくするために内部にガイドレールを設け表面処理を行うなどを考慮しています。電気的な部分では、ノイズ等の影響で誤動作が発生しないようインヒビット設計した制御基板をPOD側面の制御ボックス内に取り付けており、ロケットからの制御信号を受信することで展開蓋を保持する保持展開機構(HRM)のニクロムカッタへ電力供給・展開動作を行っています。また分離機構がロケットとのインターフェースとなっているため、ロケット・衛星間での取り決めの元、構造的・電気的インターフェースの決定・設計を行い、構造的にも電気的にも条件を満たせるか環境試験による実験・解析を行ってきました。

■分離機構搭載品・仕様
寸法:343×400×400[mm](台座込み)
搭載方式:側面搭載方式
分離方式:分離バネ放出方式
電気的I/F:ディスクリート信号により分離(2インヒビット)
展開方式:ニクロム線によるワイヤーカッタ方式、展開後ロック機構付きバネヒンジによりロック
誤展開防止:通電回路の3インヒビット設計
主な構成品:衛星搭載部(パネル、押し出しバネ・板、ガイドレール、)、保持解放機構、制御ボックス(基板、電池)、台座

以上簡単ですが本日は分離機構の概要の紹介でした。明日は分離機構の構造的・電気的な詳細設計についてです。

2014年05月05日(Mon): 5-2.分離機構 設計

Category: SPROUT Master
Time: 11:15
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで19日です!】
皆様,こんにちは.ブログ3日目の修士2年吉野です.
SPROUTマスターになろう!
本日は分離機構N-PODの設計(構造、電気系)についての紹介です。

■設計要求
N-PODのミッションは軌道投入高度まで衛星を把持しロケット信号により衛星を宇宙空間へ放出してあげることです。設計する上で衛星側・ロケット側から以下のものが主な要求として挙げられます。
【分離機構・衛星】
●打ち上げ中の衛星の収納  ●ロケット分離信号による分離
●衛星の分離に対する適切な耐故障性
【ロケット】
●質量特性、包絡域、剛性(固有振動数)、機械環境
●ロケットと分離機構間の構造的・電気的結合、分離速度
●誤展開防止  ●打ち上げ環境(温度・気圧)の適応、アウトガス

■構造設計

衛星を搭載するPOD部分は打ち上げ時の振動に耐えられるよう厚み・材料用いて設計(数値解析にかけて検討)され、衛星分離方向のパネルから衛星を収納しますが、この収納・放出する際に衛星に触れる部分には表面処理を行ったガイドレールを設け、分離速度の減衰を抑えて押し出しバネ・板により放出されます(この分離速度を考慮して数値計算からバネ定数を決定し、解析・実験から評価します)。衛星分離方向のパネルは①ロケットから2つの信号を受け、②制御基板が動作し保持解放機構(HRM)のニクロム線へ電力供給、③ニクロム線がワイヤーをヒートカットして開放し、解放されたパネルは衛星の分離を妨害しないよう120deg.の角度でラッチを掛けています。HRMは下図のような構造で赤色のワイヤーを焼切りバネによりパネルの保持が外れる仕組みです。


■電気設計

制御ボックス内にある分離機構制御基板は上図のような設計になっています。展開動作はロケットからの信号(分離許可信号・分離信号)を受信することを起点とし、基板上のリレースイッチが動作・そのスイッチを通してバッテリ電源からHRMのニクロム線へ電力供給を行いヒートカットすることができます。以上のシステムの内ロケット信号やスイッチを複数にすることでHRMの誤動作を防止しています。

以上、二日間に渡って分離機構N-PODについて紹介してきました。明日から1週間は宇宙環境を模擬して衛星の機能・性能を評価する“環境試験”についてです。
(振動試験、衝撃試験、恒温槽試験、熱真空試験、通信試験、運用試験、ベイクアウト)
ということで明日は修士1年の大日向くんからロケットの打ち上げ振動の影響を評価する振動試験の紹介です。宜しくお願いします。



2014年05月06日(Tue): 6-1.振動試験

Category: SPROUT Master
Time: 17:39
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで18日です!】
皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.

SPROUTマスターになろう!本日から1週間,各種環境試験(振動試験,衝撃試験,恒温槽試験,熱真空試験,通信試験,運用試験,ベイクアウト)に関して,紹介していきたいと思います.その中でも,本日は振動試験について紹介していきます.

振動試験
衛星は,H-IIAロケット搭載時,打ち上げ時には大きな振動を受けることとなります.ロケットの打ち上げ振動でもし衛星が壊れてしまったら,ロケットや主衛星に部品がぶつかって,傷をつけてしまう可能性があります.そういったことは,副衛星ですから,絶対に起こしてはいけません.
また,それだけではなく,ロケットの振動に耐えることができなければ自分たちが思い描くミッションをきちんとこなすことが出来ない可能性がありますから,きちんと試験をして大丈夫であることをいう必要があります.その試験が,振動試験と呼ばれています.
SPROUTN-POD


振動試験では,振動試験機をお借りして,実際のロケットの振動を模擬した振動をかけることになります.ロケットの種類によって,ロケットの振動の仕方が異なりますので,きちんとH-IIAロケットの振動の模擬をします.
また,振動試験では,振動のレベルが2通りあり,それぞれ
・QT(Qualification Test):認定試験
・AT(Acceptance Test):受入試験

と呼ばれています.QTレベルの試験は,衛星の試験用のプロトタイプモデルを使用し,打ち上げ環境より厳しい条件で振動をかけ,衛星がどの程度耐えられるのか実証する試験となっています.QTレベルの試験に耐えることができる構造は,実際のロケットの振動でも耐えることができるだろう,と実証されるので,そこでフライトモデルの設計に進むことになります.
ATレベルの試験は,衛星のフライトモデルをより実際のロケットの振動に近い条件で振動させることによって,フライトモデルが振動に耐えられる構造になっているかを実証する試験です.実際の打ち上げるフライトモデルでは,衛星へのダメージを防ぐために,QTレベルの試験は行いません.ATレベルの試験によって,フライトモデルがロケットの振動に耐えられる構造になっているかどうか分かりますので,その試験によって,ロケットへの搭載の可否の判断がされることになります.
QT/AT


ただ壊れていないことを外観チェックすること以外に,とても重要な確認ポイントがあります.それが「固有振動数のチェック」です.構造物にはそれぞれ固有振動数(~Hzと呼ばれるもの)をもっています.また,ロケットも打ち上げ時に振動しますので,衛星の固有振動数が,ロケットの振動数に近くなってしまいますと,「共振」と呼ばれる現象が起きてしまい,急激に衛星が大きく振動し始めて,壊れてしまう可能性があります.そのため,ロケットの振動と衛星の固有振動数が離れていることを振動試験で確認することになります.
振動試験の様子振動試験の様子


SPROUTは,振動試験を無事通過しましたので,H-IIAロケットで打ち上げられることで可能になりました.振動試験は毎回ドキドキでしたが,無事通過してくれたので,ロケットの振動にも耐えてくれるという自信があります!

以上,本日は振動試験の紹介でした.明日は引き続き大日向が,衝撃試験について紹介していきたいと思います!
SPROUT STR Ohinata

2014年05月07日(Wed): 6-2.衝撃試験

Category: SPROUT Master
Time: 21:25
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで17日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.

SPROUTマスターになろう!昨日に引き続き,環境試験について紹介していきたいと思います.本日は,衝撃試験について紹介していきます.

【衝撃試験】
ロケットに搭載されるとき,衛星はフェアリングで保護された状態で打ち上がることになります.フェアリング内に衛星がいるので,ロケットが宇宙に打ち上がったら,フェアリングを分離してから衛星を放出することになります.ロケットがフェアリングを分離する方法は,火工品を爆発させて分離することになるため,少し強い衝撃が衛星に加わります.その衝撃で衛星が壊れないかどうか試験する必要があります.
フェアリング分離

振動試験でお伝えした時と同じで,フェアリング分離時の衝撃で,もし衛星が壊れてしまったら,ロケットや主衛星に部品がぶつかって,傷をつけてしまう可能性があります.そういったことは,副衛星ですから,絶対に起こしてはいけません.
分離機構分離機構

衝撃試験でも,衝撃試験機をお借りして,実際のフェアリング分離時の衝撃を模擬した衝撃を加えることになります.
衝撃試験は,振動試験と少し考え方が違っていて,プロトタイプモデルとフライトモデル,共に同じレベルの衝撃を加えることとなります.衝撃ですから,プロトタイプモデルが大きな衝撃を加えるとなるとその分壊れる可能性も大きくなりますので,そういったことはせず,基本的には,実際にフェアリング分離時に予想される衝撃を上回る衝撃を加えてあげればよいです.同じレベルの衝撃をプロトタイプモデルでは2回与えることによって,衝撃耐性があるかどうかを実証しています.

衝撃を加える方法は様々あり,例えば火工品を使用するものや,落下式などの剛体運動によるもの,ガス銃や打撃装置などによる伝搬波によるものなどがあります.SPROUTでは,ガス銃と打撃装置を用いて衝撃試験を行いました.
衝撃試験の様子

直接衛星に衝撃を加えてしまうと,その衝撃で機構が変形してしまうかもしれませんし,実際はロケットとの接合部から衝撃が伝わるので,それを模擬するために,上の図のような衝撃板を用いて,衝撃を加えることになります.

衝撃を加えると,衝撃板は,このように変形してしまいます.
衝撃板

衝撃はいかに大きなものかがこれで分かるかとおもいます(テストショットを何回かしているので,傷だらけですが...).SPROUTは無事,この衝撃試験を通過することができました.きっと,実際にフライトモデルが軌道上で衝撃が加わったとしても,耐えてくれると自信を持っています!

以上,本日は衝撃試験についての紹介でした.明日は,恒温槽試験について,修士2年の藤原さん,宜しくお願いします!
SPROUT STR Ohinata

2014年05月08日(Thu): 6-3.恒温槽試験

Category: SPROUT Master
Time: 23:01
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで16日です!】

皆さま,こんにちは.
修士2年の藤原です.

SPROUTマスターになろう!昨日は衝撃試験について紹介していたので,本日は,恒温槽試験について紹介します.

【恒温槽試験】
熱系設計でも述べましたが,SPROUTは軌道上では衛星構体表面は高温にも低温にもなることが予想されます.そのため,SPROUTの衛星すべての機器が軌道上の温度に耐えることが出来るかあらかじめ確認しなくてはなりません.ほとんどの機器にはデータシートに記載されている動作温度範囲をみることでSPROUTの機器が正常に動作することが出来るかどうかという確認することはできますが,衛星が宇宙に行ってからでは,直すことも出来ないため確実に動作するか確認する必要があります.単体の機器について言えば,データシート通りに動作するか確認する必要がありますし,全ての機器が搭載された状態では,温度によって配線の抵抗値が上がり下がりすることで,常温では正常に動作していたものが動作しなくなってしまう可能性もあります.また,バッテリは低温で性能が悪くなるため低温時では全ての動作が出来ないかもしれません.そのため,SPROUTでは恒温槽試験を行いました.また,温度条件は以下の図の熱解析のバッテリの温度の最大温度と最小温度に15℃マージンを取った値で試験をしました.

熱解析結果


その結果SPROUTでは,恒温槽の設定温度を最低温度を-20℃,最高温度を30℃に設定して行いました.また,外面に配置されている機器にも動作確認をする必要があるため,外面の機器については,恒温槽の設定温度を最低温度は-50℃,最高温度は50℃に設定して行いました.また,温度センサのキャリブレーションを行いました.

恒温槽試験様子


SPROUTは無事,恒温槽試験で不具合箇所がない状態でロケットに引き渡すことが出来ました.そのため軌道上の温度でもSPROUTは問題なく動作すると自身を持っています.

以上,本日は恒温槽試験についての紹介でした.明日も引き続き熱真空試験を藤原が紹介いたします.

2014年05月09日(Fri): 6-4.熱真空試験

Category: SPROUT Master
Time: 20:31
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで15日です!】

皆さま,こんにちは.
修士2年の藤原です.

SPROUTマスターになろう!昨日は恒温槽試験について紹介していたので,本日は,熱真空試験について紹介します.

【熱真空試験】
恒温槽試験でSPROUTのシステムが軌道上の温度環境で正常に動作することを確認してきました.その上で,より宇宙に近い環境での試験として,温度環境プラス真空環境でも動作するか確認する必要があります.そのため以下に示すような熱真空槽にいれて試験をします.
恒温槽試験で温度環境でのシステムの健全性確認が可能であり,真空槽試験で真空化でのシステムの健全性確認が可能であるため,真空試験と恒温槽試験を個別に試験すれば良いとも思えますが,高温時や低温時に真空化でシステムの確認というものはとても重要です.その理由としては,軌道上温度環境化且つ真空で機器の性能が変わってしまうような機器もあるかもしれません.また,真空化であると熱の移動は,大気化と違い対流による熱を伝えるものがありません.そのため,温度がかたよってしまい局部的に高温になる機器があるかもしれないためそのような熱の伝わりがしっかり行われているのか確認する必要があります.

熱真空槽SPROUT


 また,熱真空槽にはいくつかの種類があります.SPROUTで使用した熱真空槽には上の図のような熱真空槽を使用しました.この熱真空槽は,ベースプレート(下面のパネル)から加熱され,熱真空槽の周りに液体窒素を流すことにより熱真空槽の周りを冷やし輻射によって衛星を冷却します.
また,熱真空試験には,サイクル試験と熱平衡試験の2種類がありますがSPROUTでは,前者のサイクル試験をおこないました.温度条件は,バッテリの温度が-20℃~30℃の環境化で試験を行いました.また,高温槽と違いすべての機器が同じ温度にならないため外部からも温度センサを取り付け機器の温度が一つだけたくなったりしてないかの確認を行いました.下のグラフが熱真空試験での各機器の温度です.

熱真空試験の温度履歴


 このような温度プロファイルで行った結果熱真空試験は無事に異常なくシステムの動作確認が行えたため,熱真空化においてもSPROUTは正常に動作する衛星だということがわかったため,軌道上でも問題なく運用することが可能な衛星と言えます!

以上,本日は熱真空試験についての紹介でした.明日は,通信試験について,修士2年の三田君,宜しくお願いします!

2014年05月10日(Sat): 6-5. 通信試験

Category: SPROUT Master
Time: 13:10
Author: sprout
皆さま,こんにちは!
気づけばSPROUT打ち上げまで2週間となってしまいました...
月日が経つのは早いなと感じている修士2年三田です.
SPROUTマスターになろう!本日は通信試験について紹介します!

SPROUTが宇宙空間に放出されると高度650km付近を周回することになります.放出された衛星が地上と正確に通信出来るかを宇宙でいきなり実証するわけにもいかないので,通信試験で日大局と距離が離れた場所で正確に通信出来るかを確認します.
通信試験では地上局からのアップリンク,CW通信・FM通信でのダウンリンクが行えることを目的としています.さらにはデコード率の確認やSPROUTの工学ミッションである膜面展開によって通信に影響がないか確認を行います.

地上システム


SPROUTの通信試験では正常にダウンリンクすることができました.また,膜面が展開後も地上局からのアップリンク・ダウンリンクが正常に出来たことを確認しました.SPROUTマスターに近づいてる皆様は画像が2枚目のダウンリンク画像ということがわかっていると思います!

SSTV画像


電波を使った通信では通信間の距離や周波数に応じて電波の強度に損失が生じます.宇宙からの通信でも,地上で行う実験にしても電波が進む大気では非常に減衰・吸収(または錯乱)されやすいことが上げられます.さらに宇宙にある実機の衛星とは異なり大地反射波による損失も考えれます.
SPROUTの通信試験では問題なく送受信出来たのですが,たまにデコードが出来なくなる時があります.実際,日本大学が開発したSEEDSでも違法無線やノイズの影響でデコード出来ない時もあります.調べてみますとエラー原因となるノイズや損失には多々あるのです.

エラー原因のノイズ



2週間後にはSPROUTが正常に電波を宇宙に届けてくれると信じていますので,皆様も我々SPROUTメンバー同様にSPROUTの声を聞くのを楽しみにしていてください!
明日はSPROUTの運用試験について修士2年角川が紹介します!
SPROUT CDH班 Mita

2014年05月11日(Sun): 6-6. 運用試験

Category: SPROUT Master
Time: 21:28
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで13日です!】

皆様、こんばんは 修士2年の角川です。
SPROUTマスターになろう!本日は運用試験に関してです。

実際にSPROUTが宇宙でミッションを実現するために設計を行い、その設計がSPROUTが打ち上げられ、宇宙環境にさらされても設計通りの機能が実現されているか検証するために各種環境試験を行って来ました。

各種環境試験における衛星の機能確認は、主に各サブシステムとパソコン間の通信によって行ってきました。つまり、各サブシステムの動作確認は1つ1つのサブシステムの動作状況をPC表示させモニタリングすることによってより詳細に確認を行ってきました。

しかし、SPROUTではアマチュア無線通信の通信容量の制約上、すべてのサブシステムの動作状況をモニタリングするような機能を実装することが困難です。そのため、出来るだけ少ない情報量で衛星の動作状況を知ることが出来る設計が求められていました。SPROUTの運用では衛星の動作状況は主に
・コマンドが実行されたかどうか
・各サブシステムの電源状態
・各サブシステムのコマンド処理状態(コマンド待機状態か処理中か)
で各サブシステムの動作確認を行えるようになっています。

今回の運用試験は地上局も含め、これらの実際の運用時に得られる情報だけで、衛星を運用していく練習を行い、実際の運用で起こりえる判断のブラッシュアップを行うことが主な目的です。つまり、実際の運用のコンフィギュレーションでの衛星、地上局、オペレーターを含めたend-to-end試験という位置づけです。




より実際に軌道上で想定される条件と等しくなる様に試験の条件を設定します。実際の運用条件とは、日陰と日照のサイクル、熱サイクル、真空、放射線、無重力環境などが想定されますが、今回の運用試験では日陰と日照のサイクルのみを想定することとしました。全ての想定される条件を模擬した中で、このようなend-to-end試験を出来るだけ長時間、行うにこしたことはありませんが、プロジェクトではそのような試験を実現することは出来ません。なぜなら、想定される全ての環境を模擬できる試験装置がそもそもありません。また、部分的に出来たとしても、何週間、何ヶ月も衛星を拘束してしまうと他のやらなければならない試験が消化できなくなってしまうため、スケジュールの面も考慮しなければなりません。

スプラウトは太陽同期軌道ですので、およそ90分で地球を1周します。その中で、およそ日陰が30分、日照が60分のサイクルとなっています。日陰時には太陽光が太陽電池にあたらないのでバッテリーは放電のみ行います。日照時には太陽光が太陽電池にあたっているので、太陽電池が発電を行いバッテリーが充電されます。今回の運用試験ではバッテリーの充電電源を定電圧装置で行っていますが、私たちが保有している定電圧装置では、自動的に充電している状態と、していない状態を切り替える機能がついていないため、この機能を実現する回路を製作し試験を行いました。



試験結果として、実際の運用手順の確認が行えました。特に、環境試験では1つ1つの運用シーケンスを個別で行っていましたが、運用の全体の流れの中で運用シーケンスの確認出来ました。現在もEM機を用いて同様に運用シーケンスのシミュレーションを行っています。

明日はベイクアウト試験について修士2年藤原が紹介します。

2014年05月12日(Mon): 6-7.ベイクアウト

Category: SPROUT Master
Time: 17:05
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで12日です!】

皆様,こんにちは 修士2年の藤原です.
SPROUTマスターになろう!本日はベイクアウトについて説明します.
今日が環境試験シリーズの最終章となります.

ベイクアウトとは,真空環境では有機材料の一部が揮発してしまいます. 揮発した分子は電子回路や可動部に再付着し、衛星の動作に深刻な影響を与えてしまう可能性があります.このような揮発ガスのことをアウトガスと呼びます.SPROUTではアウトガスを放出しないように考慮しケーブル1本から慎重に部品を選定し使用しています.しかし,それでも少なからずアウトガスが放出してしまいます.SPROUTは,小型相乗り副衛星ということもあり,主衛生や他の相乗り副衛星にアウトガスによって影響を与えることにもなり得るため,衛星を宇宙にもって行く前にあらかじめ熱真空槽にいれてアウトガスを放出させておき,宇宙にもって行く時にはアウトガスを放出しないようにしておきます.それがベイクアウトです.
SPROUTで行ったベイクアウトの条件は,アウトガスは高温時に放出しやすいということもあり,温度を35℃以上に設定しベイクアウトを行う時間を24時間行いました.また,この時にアウトガスがどれだけ放出されたかを確認するためにベイクアウト前後の質量計測を行います.下の図がベイクアウトの試験様子です.

ベイクアウト試験様子


また,SPROUTの温度が高すぎても低くなってもいけないため下の図のように熱電対を貼付しベイクアウトを行っている間は,温度を監視します.

熱電対の貼り付け様子


このような試験を行った結果,ベイクアウトを行っている間の温度履歴と圧力履歴は以下のようになりました.

温度,圧力履歴


このようにしてSPROUTではベイクアウトを行いました.また,熱真空試験や真空槽試験をこのベイクアウトを行う前に行っていたこともあり,アウトガスの放出は宇宙上では,ほぼないと考えています.
SPROUTのベイクアウトは以上となります.

明日からは,地上局ソフトについて説明します.まずは,地上局ハードウェアについて山口君が紹介します.

2014年05月13日(Tue): 7-1.地上局ハードウェア

Category: SPROUT Master
Time: 18:47
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまであと11日です!】

 皆様、こんにちは。学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう、今回からは地上局システムの開発について説明したいと思います。
 人工衛星の開発の一つに、衛星へコマンドを送り、そして衛星が取得したセンサデータやカメラ画像を受信する局、「地上局」の開発が必要です。
 SPROUTではアマチュア無線帯の電波を使用し、パケット通信にて衛星へアップリンク、ダウンリンクをします。
 地上局の開発は主に、ハードウェア開発および、ソフトウェア開発に分類することができます。
 本日はハードウェアについて説明していたいと思います。SPROUTは前記のおとりの通信方式によって、衛星との通信を行うために、アマチュア無線局の設置を行いました。下の図がSPROUTの地上局の構成です。

SPROUT地上局システムダイアグラム


各機器について詳しい説明はこちらのページをご覧下さい。

地上局は大きく分けて4つの系に分類することができます。それぞれの系の機能を説明していきたいと思います。

①送信系
 送信系では、パソコンによって作成されたデータをTNC(ターミナルノードコントローラ)によって、デジタルデータからパケットデータに変換され、無線機によってアンテナを通じて衛星へ発射されます。

②受信系
 受信系では、衛星から照射された無線電波をアンテナで受け、プリアンプで増幅され、受信機で受信しTNCでパケットデータからデジタルデータによって変換されパソコン上にデータを表示します。

③衛星追尾系
 衛星追尾系の役割は2つあり、
 ① 衛星軌道解析ソフトで軌道解析結果を元にアンテナを動かし衛星の方向に向けます。 
 ② 無線機の周波数の微調整をソフトウェア上で行います。

④データベース系
 衛星へ送受信したデータを解析保存するデータベースです。SPROUTへ送ったコマンドや受信したデータの解析を行う事ができ、衛星のデータを時系列でみることができます。

日本大学地上局設備とアンテナ


 このような機能を持った、地上局を日本大学に設置しました。
明日も引き続き山口が地上局ソフトウェアの開発について説明したいと思います。

2014年05月14日(Wed): 7-2.軌道予測解析ソフト

Category: SPROUT Master
Time: 16:34
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまであと10日です!】

 みなさま、こんにちは機能に引き続き学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう! 本日から3日かけて、地上局開発にて開発した、地上局を構成している3つのソフトウェアについて説明していこうと思います。
第一回目は、「軌道予測解析ソフト]です。このソフトの役割は大きく分けて2つあります。

①周波数の微調整
 衛星は地球の軌道上を高速(秒速数km)で飛来しているので、衛星の位置や速度を予測すればドップラー効果の式を使用知れば受信周波数のずれも予測できます。しかしながら、それでも多少の誤差が残り、CWを受信する場合は、周波数のバンド幅が小さいので、受信周波数を高い精度で合わせなければいけません。そうしないと、TNCでデコードできないことがあります。
 その周波数の微調整をソフト上で行える機能を持ちます。

②衛星軌道の解析
 人工衛星の軌道は、アメリカのNORADが発行しているTLE(Two Line Element)を使用して、SPG4モデルを用いて計算することにより、衛星の軌道を予測することができます。そして、その衛星の軌道をソフト上にて表示するとこができます。なので、現在衛星がどこのあたりを飛来しているかを一目で見ることができます。また、地上局から、衛星が見える(電波を受信することができる)時間(AOS,LOS時間・方位)、その時の最大迎角を同時に算出することができ、運用の計画を立てる際に重要な情報を提供できます。
 このソフトでは、TLEをソフトに入力し、ボタンを押すことだけですべての軌道計算を行えることができきます。

実際に、SPROUT の打ち上げ当日のTLEをこのソフトウェアに入れて解析してみると、次の図のような軌跡が描けます。

SPROUTのTLE※データをもとに自作
SPROUT
1 00000U 14000A 14144.15426352 .00000000 00000-0 00000-0 0 000X
2 00000 097.8740 250.9240 0035980 058.6810 194.6460 14.85960800 01

OrbitmasterのUI


明日も、引き続き山口が、地上局のアップリンク/ダウンリンクソフトについて説明したいと思います。

Category: SPROUT Master
Time: 12:21
Author: sprout
【打ち上げまであと9日です!】

 みなさま、こんにちは。SPROUTの打ち上げまで残り一桁になりました。学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう! 地上局ソフトウェア二日目です。本日は、「アップリンク/ダウンリンクソフト」について説明していこうと思います。このソフトは大きく2つのパートに分けることができます。(ソフトとしては一つのソフトです)

①アップリンクパート
 アップリンクパートでは、SPROUTにコマンドを送るために、アップリンクコマンドフォーマットに則りアップリンクコマンドを作成、送信設定するとができます。

アップリンクパートUI


②ダウンリンクパート
 ダウンリンクパートでの役割は大きく分けて2つあり、
a) ダウンリンクした生データをデータベースにて解析をかけるために保存をする
b)衛星の状態を一目でわかるように簡易的に、生データをダウンリンクフォーマットに則り解析、表示をする。
 となっています。

ダウンリンクパートUI


地上局ソフトウェア作成では、良いソフトとは何かを考え、次の3つの点に留意して開発を行いました。

 ①管理性が高いものであること
  SPROUTの運用は今後数年間にわたって行われます。自分たちが卒業した後に、ソフトウェアのアップグレードや修正を行う際に、第三者がコードを見た時に理解しやすければいけなく、そのため、本ソフトはオブジェクト指向を持つ言語(WPF後述)を使用して開発を行いました。

 ②使いやすいUIをユーザに提供すること
  使いやすいUIとは何かとは非常に難しい問題ですが、本ソフトは、次の3つの点にうついて念頭に置きUIのデザインを行いました。
 a)なるべく一つのwindowでソフトを完結させ、シンプルに。
 b)UIに一貫性を持たせる。
 c)ダウンリンクパートは、設定以外ユーザの操作を必要としない。(つまりほぼ自動)

 ③汎用性の高いものであること
アップリンクでは今後機能が拡張される可能性があります。そこで、拡張性を見越すようなデザインを行いました。
 また、シリアル通信をする際のCOMポートの自動取得や、ハンドシェイクの値を変えられるために、条件を満たせばどのPCでも使用することが可能です。
 
アップリンク/ダウンリンクソフトは、WPF(Windows Presentation Foundation)というUIを作成するXAML言語と、ロジック部を作成するC#から成る言語を使用し、エディタは、マイクロソフト社が提供しているWindows Visual Studio 2012を使用して開発を行いました。今後ARS(Armature Radio Service用のアップリンクソフト、ダウンリンクソフトを公開する予定です。

明日は、地上局最終回「データベースソフトウェア」について、修士2年の藤原が説明します。

2014年05月16日(Fri): 7-5.データベース

Category: SPROUT Master
Time: 18:16
Author: sprout
【打ち上げまであと8日です!】

 修士2年の藤原です。
 SPROUTマスターになろう! 地上局ソフトウェア三日目,最終日となりました.本日は、データベースについて説明します.

 SPROUTでは,今後運用していく上でたくさんのアップリンクデータやダウンリンクデータが集まります.また,ダウンリンクしたデータは1回のパスではデータでは,SPROUTのROMの中にあるデータの一部しかダウンリンクすることができないため,何回もダウンリンクを行ってSPROUTのROMの中にあるデータを収集する作業が必要となります.そこで,SPROUTのデータベースでは,多くのアップリンクデータやダウンリンクデータを管理することやばらばらで落とされてきたダウンリンクデータの結合処理を行うことが主な目的です.

データベースに関しては現在作成途中ですが,以下のような機能の実装を考えています.
・アップリンクデータ,ダウンリンクデータのSQLに保存
・いくつかのダウンリンクしたデータの結合処理
・SPROUTのデータの収集できていないROMのアドレス表示
・ダウンリンクしたデータの解析処理
・現在のSPROUTの情報を解析やアップリンク,ダウンリンクのデータを用いて表示する.
・データの検索機能
・任意のファイルを出力する機能

です.このような機能を保有することによりSPROUTの運用の効率を上げるだけでなく間違った運用をなくすことにもつながると考えています.そのため現在このようなデータベースソフトを現在作成しております.
 また,現在の運用中のSEEDSのデータベースは以下の図のようなソフトになっております.

SEEDSのデータベース


SPROUTでもこのようなソフトを作成し,また運用中もより使いやすいソフトに改良していく予定です.

2014年05月17日(Sat): 8-1.スケジュール管理

Category: SPROUT Master
Time: 23:50
Author: sprout
【打ち上げまであと7日です!】

 修士2年の角川です。
 SPROUTマスターになろう! 本日はSPROUTプロジェクトの開発管理について説明します。

[スケジュール管理]
SPROUTプロジェクトでは主に、通信系(C&DH、FMR)、ハウスキーピング(CW)、電源系(EPS)、衛星構体系、分離機構系、複合膜面構造物展開構造系(INF)、カメラ系(CAM)、姿勢制御系(ADC)などの各班にわかれてタスクを処理してきました。

プロジェクトでは予算とスケジュールが限られているため、開発を行っていく中のそれぞれのフェーズでどんなタスクを処理することが求められているのかを考えなければなりません。SPROUT開発プロジェクトでは自分達の都合でロケットの打ち上げ日程を変更することは出来ません。そのため、SPROUTがミッションを成功させるために、何をしなければならないのかをブレインストーミングして処理すべきタスクを網羅し、そのタスクを処理するためにどのくらいの時間と、お金がかかるのかを予測して計画をたて、すべてがロケットの打ち上げ日程に間に合う様にタスクを処理していかなければなりません。

SPROUTの統合試験を行っている際のスケジュールでは、製造したFM機が実際の宇宙環境で、設計した通りに動作できるのかどうかを環境試験を通して検証を行っていくことがメインのタスクになります。この期間では主に、試験装置が使用できる日程や、個々のシステム班のタスクの進捗状況と相談して調整しながら計画を立てていきます。

しかし、実際は試験装置に不具合が検出されて、その対処に時間を要したり、システムに不具合が生じ、その対処に負われたりと計画通りに進まないこともあります。もちろん、すべてのブレインストーミングで得られた全てのタスクを完了して打ち上げに臨むことができればより成功に近づけることは間違いありません。しかし、スケジュールとコストが限られていてなかなかそうはいかないのがプロジェクトです。

そのため、スケジュール管理ではJAXAへの衛星引き渡し前までに、このタスクだけは達成しておくべきマストなタスクを明確にして優先順位を付けておくことが重要になります。SPROUTプロジェクトがどのようにスケジュール管理を行って来たかを紹介したいと思います。

SPROUTプロジェクトでは主に以下項目を駆使してスケジュール管理を行ってきました。

・進捗報告ミーティング・・・1週間ごとにチームで集まり、各班の進捗報告や、スケジュールの調整を行う

・日報・・・決められたマイルストーンに対して1週間ごとでは管理しきれないタスクに足してメールで進捗報告を行う

・A/Iリスト・・・主に各システム班のくくりでアクションアイテム(A/I)を洗い出し、いつまでに何をやるのかを明確にした表



2014年05月18日(Sun): 8-2.文書管理

Category: SPROUT Master
Time: 23:48
Author: sprout
【打ち上げまであと6日です!】

 修士2年の角川です。
 SPROUTマスターになろう! 本日はSPROUTプロジェクトの開発管理(文書管理)について説明します。

SPROUTプロジェクトでは主に2通りの観点から文書管理を行っています。

①安全審査文書の管理・・・HⅡ-AロケットのI/F適合性審査に関する書類、安全審査に関する書類の管理を行っております。主に適合性要求、安全要求などを満たしているかどうか検証を行った結果を証明した書類です。

②SPROUT開発文書の管理・・・SPROUTの設計、試験計画・報告書、不具合報告書などの管理を行っております。

本日は、②SPROUT開発文書の管理に関して説明させて頂きたいと思います。



[開発文書の文書管理]
SPROUTプロジェクトでは運用マニュアル、各システム設計書、各システム仕様書、各種安全審査書類、各種試験計画・報告書、不具合報告書など、さまざまな文書を生成してきました(生成していきます)。また、各種試験においてはシステムの運用ログ(teraterm)や動作確認時のセンシングデータ、環境試験における試験条件に関するデータなどさまざまなデータを扱っています。

文書を管理する目的は,運用者(後世の代を含む)がSPROUTの適切な運用を行うことができる体制を整えるために、後世の代がSPROUTの開発情報を引き出すことができるようにSPROUT開発プロジェクトで生成された各種文書を整理することです。

その中でSPROUTプロジェクトチームの課題として、各システム班において、まだ文書化できていない開発情報を暗黙知的に伝承、または文書化して伝承していかなければならないということがあります。

SPROUTの開発情報が適切に後世に受け継がれないと、後半の運用フェーズにおいて開発当初のメンバーが持っていた暗黙知的な知識がごそっと抜けてしまいます。こうなると、約5年間を想定しているSPROUT運用の中では、SPROUTというシステムがブラックボックスになってしまい、後世の代が運用を行っている際に、万が一不具合が起きたときに対処できなくなってしまいます。

この課題に対して、現在SPROUT開発チームでは、システム仕様や試験結果、設計変更などの情報の、より詳細な文書化に努めています。

次回は最終回です。最後にSPROUTの今後の運用計画をお伝えしようと思います。

2014年05月19日(Mon): 9-1.打ち上げ後の運用計画

Category: SPROUT Master
Time: 21:11
Author: sprout
【打ち上げまであと5日です!】

こんばんは修士2年の角川です。SPROUTマスターになろう最終日です!
本日は打ち上げ後の運用スケジュールに関して説明させて頂きます。

[打ち上げ後の運用スケジュール]
以前 4-1.運用予測において、ざっくりとした SPROUTの運用予測をお伝え致しました。今回は、もう少し詳しく、SPROUTの運用について説明したいと思います。
以下の表は詳細な運用計画です。



本日はこの中の1日目1stパス(SPROUT初期モード)について詳しく説明させて頂きたいと思います。

SPROUTはロケットから放出された後、アンテナ展開を行います。

SPROUTがロケットから放出されるとSPROUTの全システムは初期モードに入ります。SPROUT初期モードの主な目的は収納されているアンテナを展開することです。アンテナ展開機構はアンテナに拘束されているダイニーマ(釣り糸)をニクロム線で焼き切り展開する仕組みになっています。

万が一アンテナが展開しないということがあると、地上局からのアップリンクが通らず、また、ハウスキーピングデータも拾えないためSPROUTが衛星として機能しなくなってしまいます。そのため、初期モード中は、万が一、一発でアンテナが展開しなかった場合(例えば想定していたよりもアンテナ展開部のニクロム線温度が低温になってしまっていた場合など)を想定して30分に1回アンテナ展開機構がニクロム線を加熱することを繰り返すようになっています。

無事に地上でハウスキーピングデータを所得できて、アンテナが展開されていることが確認できたら、地上局からSPROUTにコマンドを送ります。

このコマンド(SPROUTが衛星放出後初めて地上から受けるコマンド)をトリガーとして、SPROUTは初期モードから通常モードに遷移し、30分に一回行っていたアンテナ展開をやめます。以下の図はSPROUT初期モードのシーケンスを図にしたものです。どのサブシステムが何をトリガーにして動作を行うのか、サブシステム間の相互作用を明確にした図です。



このようにして、地上局とSPROUTとの通信が確立されます。このあとは順次衛星の機能健全性を確認して行く計画となっております。



2014年05月19日(Mon): 9-2.アウトリーチ計画

Category: SPROUT Master
Time: 23:30
Author: sprout
【打ち上げまであと5日です!】

こんばんは.修士2年の上原です.SPROUTマスターになろう最終日のおおとりを任せてもらいました!本日は打ち上げ後の運用スケジュールに関して既に角川から説明させていただきました.私からはSPROUTのアウトリーチ計画という視点で運用計画をお話しようと思います.

SPROUTが初期運用を終え,衛星の機能健全性を確認していくフェーズでは私たちの工学ミッション機能と並行して,アマチュア無線ミッション機能も段階的に確認運用していきます.平日は,主に工学ミッションデータのダウンリンクや各機能確認をし,休日(土日)は,アマチュア無線ミッションを受信,交信していただこうと考えております.ただ平日休日限らず,CW/FM運用で衛星の基本データ(ハウスキーピングデータ)のダウンリンクを行いますので,いつでも受信は行っていただけるようになります.全体運用シーケンスからみたアマチュア無線ミッションとしては,以下のように段階的に開放するスケジュールを計画しています.

■アマチュア無線開放フェーズ1
 デジトーカ,SSTVダウンリンクを実施致します.
■アマチュア無線開放フェーズ2
 音声・音声メッセージボックスアップリンク・ダウンリンクを実施致します.
■アマチュア無線開放フェーズ3
 地球撮影シャッターアップリンク,地球画像SSTVダウンリンクを実施致します.

→各アマチュア無線ミッション機能の詳細はこちらのページへ.

ここまで読んだだけでは「アマチュア無線といえど,敷居が高いなぁ.私では無理だなぁ.」なんて思う方がほとんどではないでしょうか.ですが,実は衛星の電波を受信するだけであれば,無線免許は必要としないため,一般の方にも衛星からの電波を受信してもらうことができます!
宮崎研究室では2008年に打ち上がったSEEDS-II(CO-66)や缶サットとともに多くの方に宇宙をもっと身近に感じてもらえるよう,興味を持っていただけるように草の根的な活動を積極的に行っています.
様々な宇宙イベントやハムフェアでの展示,JAMSATシンポジウムでの発表,UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)への参加,小中高生を対象に手作りアンテナを製作し,衛星の電波を受信するイベントも開催しています.

また,SPROUTではマイクロメッセージプロジェクトという企画も行い,一般の方から宇宙へ向けてのメッセージや写真などを応募しました.

→応募メッセージギャラリーはこちらのページへ.

アウトリーチ活動は開発や研究とは違った視点で”宇宙”や”工学”について考えるきっかけを与えてくれる有意義な活動であると思います.SPROUTが無事宇宙から電波を出し続けてくれるようになれば,SEED-II,SPROUTの電波を受信するイベントや宇宙イベントでのSPROUTのEM(エンジニアリングモデル)の展示など今後の宇宙工学分野へ関心を持っていただけるよう精力的に活動していきたいと考えています.

皆様,約一ヶ月に渡った「SPROUTマスターになろう!」ですが,内容はぎっしりでしたので,最後まで読破してくださった方は,もう”SPROUT”を語れる?レベルにいると思います!
明日からは,打ち上げ直前準備の様子や研究室の雰囲気など書いていきたいと思います.