2014年04月14日(Mon): 0.SPROUT概要

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 21:52
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで40日です!】
皆様,こんにちは.
今年は衛星工房に何人入ってくれるか期待と不安が入り混じる修士2年の三田です.
すっかり春らしい温かい季節となりました.といってる間に最近は桜の散るのを見て寂しい感じも致します...

あと1ヶ月+αで打ち上げということで,これから連日皆様にSPROUTを知ってもらい,打ち上げの時にはSPROUTマスターになってもらおうと思い更新していきたいと思います.
今日は簡単にですが,SPROUTの概要と思い出を三田が語りたいと思います.


SPace Research On Unique Technology,通称SPROUTは一辺20[cm],重量はおおよそ6.7[kg]の立方体です.SPROUTには「芽を出す」,「急速に成長する」といった意味があります.SEEDSで蒔いた種がSPROUTで芽を出す.ロマンチックですね.そんなSPROUTの内部のシステムはバス部と呼ばれる電源や通信,データ処理を行うシステムとミッション部と呼ばれる姿勢決定・制御系や複合膜面展開系,アマチュア無線系に分かれています.各システムの説明はおいおい更新していきたいと思います.SPROUTのミッションは宇宙空間でインフレータブルチューブと膜面からなる複合膜面の展開をメインとしております.20[cm]の立方体から約1.5[m]の正三角形の膜面が産声をあげます.また,SPROUTでは日大のアマチュア無線技術向上のため,SPROUTを通じてアマチュア無線家の方と技術交流をすることで,私達の無線通信技術の訓練を行っていきたいと思っております.デジトーカやSSTV,そしてカメラのシャッター権解放を行っていきます.

複合膜面展開


また,SPROUTではロケットから分離される機構,通称N-PODを自作しております.SPROUTは,従来のCubeSat Projectでの標準規格である10[cm]立方ではなく,20[cm]であること,さらには自作することで衛星自体の設計要求を軽くすることを狙いとしています.N-PODは蓋が展開することで,収められていたバネによって飛び出す,いわゆるびっくり箱方式で宇宙空間に展開されます.そんなSPROUT,N-PODのフライトモデルが以下の写真です!!

SPROUT

N-POD


最後に閉じるのが近づいていくうちに「あとSPROUTに触れるのは何回なのかな...」とか考えたりして寂しい気持ちがありました.きっとSPROUTもそんな気持ちで駄々をこねていたと思います.子離れ出来ない親の気持ちはこんな感じなのかなと思った23歳の春でした.もうこの目で見ることのないSPROUTですが,宇宙から電波を届けてくれるよう祈る日々です.

明日はアマチュア無線ミッションについて修士2年上原が登場します!
SPROUT CAM班 Mita

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:35
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで39日!】
みなさん,こんばんは!
修士2年の上原です.

あと1ヶ月+αで打ち上げということで,これから連日皆様にSPROUTを知ってもらい,打ち上げの時にはSPROUTマスターになってもらおうと思い更新していきたいと思います.
SPROUTマスターになろう!第二弾は,SPROUTのアマチュア無線ミッションについて説明いたします.


アマチュア無線ミッションは,アマチュア無線家による衛星運用を提供し,技術鍛錬の場として活用してもらい,私達自身もアマチュア無線家として自己訓練や通信及び技術的研究を行っていこう!というミッションとなります.なぜアマチュア無線ミッションを行うのかと言いますと,SPROUTは通信周波数帯にアマチュア無線帯を利用させていただいている「アマチュア衛星」として打ち上げられるためです.2008年の時に打ち上げたSEEDS-IIの時にも,SSTVやデジトーカといったものを搭載し,アマチュア衛星として多くの方に受信していただいてきました.その意思を継ぎ,SPROUTでもSSTV,デジトーカはもちろん,音声,文字デジピータ(後述しますが,語弊があり改名いたしました.)やマイクロフィルムメッセージを企画し,提供できる運用体制を整え,より多くのアマチュア無線家の方々や一般の方々にSPROUTの電波を交信,受信していただけるように尽力したいと思っています!それでは簡単ではありますが,SPROUTの各アマチュア無線ミッションをご紹介いたします!

【SSTV】(一般の方,アマチュア無線家向け)
打ち上げ前に予め保存した画像(14枚)や,カメラで撮影した地球画像をSSTV信号に変換して送信を行います.SSTVはFAXのような音声信号「ピロピロピロ~」という音がします.運用試験時に撮影したSSTV画像です.

【デジトーカ】(一般の方,アマチュア無線家向け)
打ち上げ前に,予めICに録音した音声を軌道上で再生・送信を行います.
ここで,ICに録音した音声のレコーディング風景を初公開!!
Mrs.aritaさんのレコーディング!津田沼のRBC様でレコーディングをさせていただきました.様々な機器
マンションの一室にこんなに素晴らしいレコーディングスタジオがあり,驚きでした!

【音声メッセージボックス】(アマチュア無線家向け)
音声をアップリンクし,録音した音声を軌道上で再生・送信を行います.
私たちは,当初「デジピータ」と呼んでいた機能ですが,アマチュア無線家の方にお聞きしたところ,中継器に近い印象を与えかねないとのアドバイスをいただけましたので,アップリンクしていただいた音声をメッセージボックスに登録し,それを軌道上で再生・送信を行うという意味合いの「音声メッセージボックス」としました.文字メッセージボックスに関しても同様に改名致しました.
イメージ図
【文字メッセージボックス】(アマチュア無線家向け)
文字パケットをアップリンクし,記録した文字パケットを軌道上から地上に送信を行います.

【マイクロフィルムメッセージ】(一般の方,アマチュア無線家向け)
皆さんからいただいた写真やはがき,メッセージをマイクロフィルム化してSPROUTとともに宇宙へ届けようという企画です.こちらはには121通ものメッセージをいただくことができました!ご応募いただいた皆さんのメッセージはこちらの特設サイトに公開しています.またブログにてマイクロフィルムが出来上がるまでを報告させていただきました.ぜひこちら【前編/後編】もご覧下さい.

上記の5つの機能や企画以外にもカメラ撮影関係のアマチュア無線ミッションも検討しています!そちらは明日詳しくお話したいと思います.

最近は全国の大学で作られた衛星が次々と開発されて宇宙へ打ち上げられているのですが,ほとんどの大学が通信周波数にアマチュア無線帯を利用しています.それは,

●アマチュア無線帯の通信機器は比較的安価で地上局アンテナ等も設置が容易で安価であること.
●ネットや文献でアマチュア衛星の運用のノウハウが公開されていること.
●アマチュア無線やアマチュア衛星通信関連のイベントに参加すると多くの無線技術を持った方と話せ,貴重な意見・知識を得られること.
●実際に衛星を打上げた際,衛星の特定に国内外にいるたくさんのアマチュア無線家の方々の協力を得られること.

などと大学側にとてもメリットがあるためです.ですが,本来アマチュア無線帯を利用するからには,国際法や日本の電波法で定められている通り,私たちも含め多くのアマチュア無線家の人達に無線技術の鍛錬の場として利用していただき,楽しんでいただける場の1つとなる様に考えるべきであります.これまでに日本大学でも試行錯誤し,衛星の開発を行ってきていますが,それでも十分ではないと考えています.

今後,打ち上げ直後には多くのアマチュア無線家の方に受信協力をお願いする形となると思いますが,多くの方がSPROUTを通じて宇宙開発や無線技術により関心を持っていただけるようにプロジェクトチーム一丸となって取り組んでいこうと思っております!

実際の運用に関しても後日,お話させていただく予定です.今のところではありますが,
・アマチュア無線ミッションのダウンリンク周波数は437.600MHzとなっております.
・プロトコルに関してはモールス符号,AX.25,音声信号等を採用しております.

詳細に関してはホームページで順次公開をしていく予定ですので,今後ともどうぞよろしくお願い致します.

では,明日はカメラ撮影に関して三田から紹介させていただきたいと思います!

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:33
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで38日です!】
皆様,こんにちは.
一昨日に引き続き登場の修士2年の三田です.

あと1ヶ月+αで打ち上げということで,これから連日皆様にSPROUTを知ってもらい,打ち上げの時にはSPROUTマスターになってもらおうと思い更新していきたいと思います.
SPROUTマスターになろう!第三弾は,昨日に引き続きましてSPROUTのアマチュア無線ミッションについて説明いたします.
本日はSPROUTに搭載されているカメラによるアマチュア無線ミッションを説明いたします.

SPROUTに搭載されているカメラによって撮影された画像は640×480のサイズで撮影されます.撮影された画像は640×480のフルサイズ,サムネイル化(320×240,160×120,128×96…),Scotti1形式のSSTVの3種類の方式でダウンリンクを行います.
また,SPROUTのアウトリーチミッションでは2種類の撮影モードによって地球の撮影を行っていきます.

① 時間指定撮影モード
アップリンクによって1秒刻みで最大33秒の撮影間隔で最大6枚まで撮影出来るモード

② ADCシャッターモード
写真の1枚目を太陽センサからカメラが地球を向いたと判断したらシャッターを切り,それ以降を1秒刻みで最大33秒の撮影間隔で最大6枚まで撮影出来るモード.一定時間経過後,タイムアウトしてカメラが自動的に撮影

また,SPROUTではSSTVの画像上部の320×16[pixel]を用いてカラーバーによるコールサインとADCシャッターの成功,SSTVの何枚目をダウンリンクしているかを判断するシステムにしております.昨日のSSTVの画像を引用させていただきますと以下のような判別が出来ます!

SSTVのイメージ


ADCシャッター判別が
赤:通常撮影モード(または予め保存した画像)
緑:ADCシャッターモードのタイムアウト
青:ADCシャッターモード成功

枚数判別
赤:1枚目
緑:2枚目
青:3枚目

といった感じで合計9パターンのカメラで撮影されたSSTV画像を楽しむことが出来ます!衛星のカメラのシャッターを自分できって,ダウンリンクしたらさぞ楽しいでしょう!
カメラ班として是非この手で地球を撮影したいと願う今日この頃です.


明日はアマチュアミッションの最後,運用編を上原が紹介していきます!
SPROUT ARS班 Mita


Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:55
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで37日です!】
皆様,こんばんは.
一昨日に引き続き登場の修士2年の上原です.

あと1ヶ月+αで打ち上げということで,これから連日皆様にSPROUTを知ってもらい,打ち上げの時にはSPROUTマスターになってもらおうと思い更新していきたいと思います.
SPROUTマスターになろう!第四弾は,昨日に引き続きましてSPROUTのアマチュア無線ミッションについて説明いたします.本日は実際の運用についてお話できればと思います.

昨日から説明させていただいていたアマチュア無線ミッションですが,SPROUTの工学ミッションと並行して順次進めていければ思っています.平日は,主に工学ミッションデータのダウンリンクや各機能確認をさせていただき,休日(土日)は,アマチュア無線ミッションを受信,交信していただこうと考えております.ただ平日休日限らず,CW/FM運用でテレメトリデータのダウンリンクを行いますので,いつでも受信は行っていただけるようになると思います.

以下に各アマチュア無線ミッションの運用方法を簡単に書きたいと思います.

まずは,SPROUTの電波(宇宙からの電波)を受信するためにはいくつかの事柄を知ってもらい,準備してもらう必要があります.知らなければいけないことは,SPROUTの発信している周波数と電波形式,SPROUTの運用モードとそのフォーマット(文法)です.準備しなければならないことは,受信,交信ができる無線設備(解析ソフトウェアも含む)です.またアップリンクを行うにはアマチュア無線資格が必要になります.それを踏まえての難易度も表してみました.

【SSTV】難易度:★★
SSTV運用は土日に実施することを検討しています.MMSV等のフリーソフトを活用してもらい,受信していただくことになると思います.ロケットから宇宙に放出されてすぐに,地球撮影をしてSSTVでダウンリンクをしようと考えております.そのため,これが打ち上げ後最初のアマチュア無線運用となります.SPROUTのSSTV送信では,このように,搭載カメラで撮影した写真を送るのと,予めSPROUTのICに保存されている14枚の画像を送るのの2種類の画像送信を考えています.そして,特に,後者の14枚の画像をコンプリートした人には,何か特典を!と検討しています.
■ダウンリンク周波数:437.600MHz
■ダウンリンク電波形式:F3F
■送信出力:450mW
■無線設備:ハンディ無線機,手作りアンテナで受信はできます.フリーソフトも活用するため,PCは必要です.

【デジトーカ】難易度:★
デジトーカ運用も土日に実施することを検討しています.デジトーカの音声信号は無線機を準備してもらい,アンテナで受信してもらうことになります.
■ダウンリンク周波数:437.600MHz
■ダウンリンク電波形式:F3E
■送信出力:450mW
■無線設備:ハンディ無線機,手作りアンテナで受信はできます.

【音声・文字メッセージボックス】難易度:★★★
音声・文字メッセージボックス運用も土日に実施することを検討していますが,この機能は無線家の方にアップリンクをしてもらうこととなるため,日本大学ではアマチュア無線資格と音声内容の確認をさせていただいた後,運用を実施していただこうと考えています.
■アップリンク周波数:VHF帯
■アップリンク電波形式:F2D
■ダウンリンク周波数:437.600MHz
■ダウンリンク電波形式:F3E(音声),F2D(文字)
■送信出力:450mW
■無線設備:送受信できる無線機,アンテナが必要です.専用のソフトウェアを配布する予定ですので,PCは必要です.

【カメラ撮影権の開放】難易度:★★★
こちらもメッセージボックス同様に無線資格と音声内容の確認をさせていただいた後,運用を実施していただこうと考えています.カメラのシャッターを自分できって,ダウンリンクができたら興奮すること間違いなしです!SSTVでダウンリンクもできます.
■アップリンク周波数:VHF帯
■アップリンク電波形式:F2D
■ダウンリンク周波数:437.600MHz
■ダウンリンク電波形式:F3F,F2D
■送信出力:450mW
■無線設備:送受信できる無線機,アンテナが必要です.専用のソフトウェアを配布する予定ですので,PCは必要です.

音声・文字メッセージボックスやカメラ撮影権の開放はあくまでも「衛星を制御するコマンド」には当たらないため,一般のアマチュア無線家の方にも利用していただくことが可能となっております.

ホームページでは,Operationページより打ち上げ情報をはじめ,各運用方法,スケジュール,運用ソフトウェア,テレメトリフォーマット,受信報告ページを順次公開する予定です.
SPROUTのホームページ


人工衛星の電波を受信しているアマチュア無線家で構成された日本アマチュア無線協会(JAMSAT)という団体があり,人工衛星の電波を受信するために必要な設備,知識などをホームページにて分かりやすく解説しています.ぜひJAMSATホームページも一緒にご覧下さい.入門者向けページもあります!そこのあなたも今日から衛星受信を趣味にしませんか?

ということで,3日間に及んだアマチュア無線ミッションの紹介ですが,次回からは工学ミッションのメインミッションである膜展開ミッションについて修士1年の丸木から説明致します.

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:49
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで36日です!】

皆様,こんにちは.
修士1年の丸木です.

SPROUTマスターになろう!本日から三日間はメインミッションである膜展開についてお送りします.
今日はまず,膜展開ミッションの概要についてお伝えします.

人工衛星において膜展開というと,遠心力を利用したスピン展開や支持部材を伸展させて膜を展開する方法がありますが,SPROUTの場合は後者になります.
SPROUTでいう膜を広げるための支持部材に当たるのがインフレータブルチューブです.

インフレータブル構造というは,ガスを注入することで膨らむ構造になります.なので,インフレータブルチューブはガスの注入により伸展し,膜を広げる役割を担ってくれます.
一般的にインフレータブル構造の利点は,複雑な展開機構が要らず,ガスを注入するというone-actionで展開が可能なことです.そのため,展開機構の開発が比較的簡単になるのと,展開に要する時間が短いのです.
また,衛星が大きくなっても,インフレータブル構造物の質量はあまり変わりません.そのため今後の宇宙開発において大型構造物への利用にも期待できます.


膜面



【ミッション】
膜展開に関するミッションは次の通りです.
なお,ミッションを行う予定である時期を記載しておりますが,運用の進め方によって変更になる可能性がありますので,ご了承ください.

1) 複合膜面構造物の展開実証(打ち上げから6か月後に達成予定)
まずは複合膜面の宇宙での展開実証そのものを成功させなければいけません.そういう意味を込めて,これをミニマムサクセスに位置付けています.

2) 複合膜面構造物の設計手法の実証(打ち上げから10か月後達成予定)
展開が成功したら,取得したデータを解析し,複合膜面構造物の設計手法について評価します.
また数値シミュレーションの結果と比較して,展開挙動のより詳しい考察と数値シミュレーション手法の向上を目指します.
ここまでで,フルサクセスとしています.

3) 複合膜面構造物による軌道降下率変化の予測(打ち上げから5年後)
自作の軌道シミュレータから予測した結果と実際の結果を照らし合わせて,予測精度の評価を行いシミュレーションの妥当性を示します.
これはエクストラサクセスに位置付けています.


【膜展開シーケンス】
膜面の展開シーケンスは一次展開と二次展開に分かれます.
一次展開では,収納機構から複合膜面が解放されます.きっちり折り畳まれているため,折り目の復元力によって少し展開します.
二次展開では,収納機構のフタが開いたことを感知して,チューブにガスが注入され,正三角形の形に広がります.


シーケンス





さて,ここから話題は変わって,本日行われた宮崎研究室のB4歓迎会についてお送りしたいと思います.
今年は去年と同様10人の4年生が研究室メンバーに加わりました.


懇親会前

懇親会前2

懇親会1

懇親会2

懇親会3



本日は残念ながら二人風邪でお休みでしたが,自己紹介を終え,なんとなく皆の人となりを把握することが出来ました.


集合写真


雨のため,建物の階段で写真を撮らせて頂きました.
一風変わった集合写真となりました.
今年も一年,楽しい研究室生活が送れたらなと思います.

明日はB2の福永より,膜展開のミッション評価についてお送りします.

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:52
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで35日です!】

皆様,こんにちは.
学部2年の福永です.

SPROUTマスターになろう!昨日に引き続き三日間はメインミッションである膜展開についてお送りします. 2日目の今日は膜展開ミッションの評価についてお伝えします.
昨日伝えました通り,膜面展開ミッションについては複合膜面構造物の展開実証をすることにあります.

膜面


その評価はSPROUTに搭載された2台のカメラと圧力センサ,インフレータブルチューブに取り付けられたピエゾセンサによって評価します.SPROUTに搭載された2台のカメラによって連続的に14枚の写真撮影を行い,インフレータブルチューブ,そして膜面についている特徴点をステレオ視によって複合膜面の展開挙動を推定します.また,圧力センサの値とカメラから計測されたデータを合わせ,地上による実験と数値シュミレーションの精度を向上させることで今後の複合膜面構造物の設計の向上に寄与したいと考えています.さらに,ピエゾセンサの取得によって宇宙空間で折りたたまれたチューブの振動解析が行え,カメラ画像で取得されたデータと合わせることでより精度の良い計測データとなると考えています.

複合膜面


近年,運用を終えた衛星がその後も宇宙空間に残りデブリ(ゴミ)となる問題があります.そこでSPROUTではカメラデータから複合膜面構造物の展開挙動を推定するとともに,膜面の面積展開率を評価し,自作の軌道シュミレータで軌道降下率の予測を行います.SPROUTの膜面が100%展開すると軌道上では3.73年で大気圏に突入する予測となります.さらに面積展開率と軌道上滞在年数を事前に予測しておき,膜面展開後の軌道データから独自に開発した軌道シュミレータの評価を行っていきます.また,SPROUTではデブリ対策のため軌道上滞在年数が5年となるよう,膜面の展開率85%をミッションとしています.

軌道降下率


1年と短かったですが,私の携わった複合膜面構造物が宇宙で展開するのを心待ちにしています!
明日は膜面の展開制御について修士2年の三田が紹介します.

2014年04月20日(Sun): 2-3. 展開制御について

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 17:10
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで34日です!】

皆様,こんにちは.
修士2年の三田です.

SPROUTマスターになろう!一昨日からの三日間はメインミッションである膜展開についてお送りします. 最終日の今日は膜展開ミッションの展開制御についてお伝えします.
一昨日から伝えました通り,膜面展開ミッションについては複合膜面構造物の展開実証をすることにあります.膜面の展開シーケンスは一次展開と二次展開があります.

シーケンス


一次展開は収納機構に折りたたまれたインフレータブルチューブと膜面の復元力による自己伸展力によって展開します.打上げ時は収納機構の両端のダイニーマによって保持することで展開の制御を行っています.地上局からの展開コマンドを受け取ることでダイニーマに接してるニクロム線を加熱することにより溶断して蓋をバネヒンジによって解放します.
二次展開は2本のインフレータブルチューブにガスを供給することによって膜面の展開を行います.ガスの供給は,形状記憶合金(Shape Memory Alloy,SMA)を加熱して伸ばすことで,その先端に取り付けたニードル(針)をガスタンクのフタに突き刺すことで,宇宙空間でガスタンクに穴を空けるという制御方式になっています.

ガスタンク開放


また,インフレータブルチューブにガスが入り過ぎないように2つの電磁バルブによってガスの流入を制御しています.ガスタンクから供給されるガスの制御に1つとインフレータブルチューブ内のガスを宇宙空間にデガスする制御にもう1つを用いています.この2つの電磁バルブによってガスタンクから供給されるガスのインフレータブルチューブ内の流入を制御し,さらにはガスの保持・解放を行っています.

制御システム


SPROUTでは日陰で膜面の展開を行いますが,ガスを保持した状態で日照に軌道が変わればサーマルショックの影響を確認することが出来ます.昨日伝えました圧力センサやピエゾセンサ,さらには温度センサのデータから複合膜面構造物の軌道データが各種センサから定量的に評価することに繋がり,今後の複合膜面構造物の設計の指針となるデータの取得を行えます.

本日で膜面展開ミッションは一時終わりとなりますが,システムについて後日お伝えしますのでそちらと合わせて読んでいただけたらSPROUTマスターに近づけると思います.
明日から姿勢決定・制御ミッションについて修士1年大日向が紹介します!
SPROUT INF班 Mita


Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 20:59
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで33日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年になりました,大日向です.

SPROUTマスターになろう!本日から二日間は姿勢決定・制御ミッションについてお送りします.今日はまず,姿勢決定・制御ミッションの概要と姿勢決定についてお伝えします.

姿勢決定・制御の概要
SPROUTの姿勢決定・制御ミッションとしては以下のように定めています.

数kg級衛星用姿勢決定・制御技術の実証
太陽センサ.地磁気センサ・ジャイロセンサを用いた姿勢決定実験,磁気トルカを用いた姿勢制御実験を行い,数kg級衛星で可能な姿勢決定・制御レベルを示すことを目指しています.

それでは,姿勢決定・制御の簡単な流れについて説明します.姿勢決定・制御系は大きく分けて,姿勢センサとMPU(実際に計算処理を行うマイコン)とアクチュエータに分かれています.
姿勢決定・制御システム


まず,太陽センサ・地磁気センサ・ジャイロセンサを駆使して姿勢決定(今の自分の姿勢がどの方向を向いているかを知る)を行います.その後,目標姿勢に向かって,磁気トルカを用いて姿勢制御を行います.また,太陽センサ・磁気トルカに関しては,日大で自作を行いました.
自作磁気トルカ自作太陽センサ

それでは,姿勢決定・制御の最初の段階である姿勢決定について説明したいと思います.

姿勢決定
センサには様々なものが存在していますが,SPROUTではコストやサイズなど,様々なトレードオフを経て,
・太陽センサ・・・太陽方向を検知する
・地磁気センサ・・・地球磁場の方向を検知する
・ジャイロセンサ・・・衛星自身の回転の角速度を測定する

の3種類を用いることになりました.これらのセンサを駆使して姿勢決定を行っています.
姿勢決定を行う際には,下図の青線の基準座標(軌道座標系と呼んでいます)に対して,下図の赤線の衛星座標(機体座標系と呼んでいます)がどれぐらいずれているか,というのを計算することによって,現在の自分の姿勢を知ることができます.下図のθを計算することが出来れば,衛星の姿勢が分かります.
基準座標と軌道座標


姿勢決定を行う手法は,様々な方法が既に提案されており,SPROUTに搭載する代表なものとして,TRIAD法q-Method拡張カルマンフィルタなどがあります.これらのワードで検索していただければ,様々な論文がヒットすると思います.SPROUTのオンボードでは実際にこれらを数値計算することによって姿勢を求めています.

以上で,姿勢決定・制御の概要と姿勢決定(今の自分の姿勢を知ること)の説明は終わりです.実は,姿勢決定をするだけでも,センサのノイズの影響の考慮や,計算速度の考慮(あまりに遅いと姿勢制御どころではなくなります)など,考えることは沢山あり,数値計算に様々な工夫が施されています.

本日は姿勢決定・制御ミッションのうち,姿勢決定についてお送りしましたが,
明日はいよいよ姿勢制御について紹介していこうと思います!

2014年04月22日(Tue): 3-2.姿勢制御について

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 21:12
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで32日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.

SPROUTマスターになろう!昨日に引き続き,姿勢決定・制御ミッションについてお送りします.本日は姿勢決定・制御ミッションのうち,姿勢制御についてお伝えします.

姿勢制御
姿勢制御用のアクチュエータとしては,リアクションホイールやスラスタなど,様々なものが存在していますが,SPROUTの姿勢制御は磁気トルカを用いた3軸姿勢制御を行います.
磁気トルカとは,電磁石のことで,コイルを巻いて作られています.コイルですから,電気を流すと電磁石となります(右ねじの法則のことです).
右ねじの法則

磁気トルカ


磁石のN極とS極を近づけると磁石に力が加わり,くっつきます.これと同じ原理で,磁気トルカ(電磁石)と地球の磁場の干渉によって,磁気トルカに力が加わり,衛星の姿勢制御を行うことができるのです.

姿勢制御の種類としては主に2種類があります.
デスピン制御・・・衛星の回転を抑制する制御
指向制御・・・任意の姿勢に指向させる制御

昨日お伝えしたように,姿勢制御をするときも,どれぐらいの力を加えればいいのか,数値計算を行う必要があります.姿勢制御の手法に関しても,様々な方法が既に提案されており,SPROUTに搭載する代表なものとして,デスピン制御にB-dot制御則,指向制御にクロスプロダクト制御則というものを用いています.一例として,デスピン制御のシミュレーションの結果を紹介します.

デスピン制御


上のグラフは,衛星の回転を抑制するデスピン制御のシミュレーション結果です.縦軸が衛星の角速度で,横軸が時間です.グラフをみると,衛星の角速度が徐々に抑制されていることが分かります.これはシミュレーション結果ですので,実際はどのような運動をしてくれるのか,楽しみです.

指向制御では,任意の姿勢に指向させることができる制御であるので,つまり地球を向かせることも可能です.SPROUTでは,カメラが搭載されていますので,カメラを地球に向けて,地球を撮影する,といったこともミッションに取り入れています.
ぜひ,皆さまには姿勢制御をきちんと行って,きれいな地球の写真をお送りすることができればと思っています!

本日で姿勢決定・制御ミッションに関しては一時終わりとなりますが,姿勢決定・制御システムの設計などに関しては,後日またお伝えする予定です.
明日からはいよいよ衛星の設計やシステムに関して紹介していきたいと思います!衛星のシステムは沢山ありますので,それぞれ細かく知ることによって,よりSPROUTマスターに近づけると思います!
それでは次は,運用予測について,修士2年の角川さん,よろしくおねがいします.

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:19
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで31日です!】
皆様、こんばんは
修士2年の角川です。

先日まで、SPROUTのミッションに関して紹介を行なってきました。本日からはそれらのミッションを実現するために、どのように衛星のシステム設計を行なって来たのかを紹介していきたいと思います。

設計とは、要求から具体的に、どんな機能が必要で、どうゆう条件下で、どうやって実現するのかを考慮し、部品を選定したり、値を決定して仕様を特定していくことです。
色々考えて試してみた末、要求が実現できなければ何度も繰り返して行なっていく根気のいる作業ですが、達成すればそれだけ達成感があるものだと思います。
要求は、ミッションを実現するためには何をしなければならないのか、どのような条件の下でシステムが動作しなければならないのか実際の衛星の運用を予測した上で、定義していきます。衛星設計では特に、実際に衛星がさらされる環境(ロケットの打ち上げ時振動、衝撃etc…)や、宇宙環境(無重力、真空、熱、放射線etc…)などを想定して要求を決めていきます。また、外部から要求をもらうこともあります。

運用想定

要求の種類としてSPROUTでは主に3つあります。
ミッション要求:SPROUTのミッションを達成するために必要なことを定義したもの
システム要求:衛星を運用する上で必要となることを定義したもの
安全審査要求:衛星がロケットに対して安全であるために必要となることを定義したもの

これらの要求に対して以下の用に分類分けをし設計を行なっていきました。それぞれの設計の詳細につきましては随時更新を行なっていきたいと思います。

▾ミッション系
• カメラ系設計
• 膜面展開系設計
• 姿勢決定・制御系

▾バス系
• 通信系設計
• 電源系設計
• 構造系設計
• 熱系設計
• OBC系設計
• インヒビット設計

宮崎研究室では2008年に打ち上げ、現在運用中のSEEDS-Ⅱの設計を流用することによって、より信頼性の高い設計を行なっています。

それぞれのパートで設計が終わるとそれぞれのパートで設計したシステム同士を統合して、環境試験を行ってシステム全体として問題がないことを確認していき。。。ということになりますが、この話はまた後日、紹介させて頂きたいと思います。

【運用予測】
現在SPROUT開発チームでは運用計画を練っています。ざっくりとした予測ですが、SEEDSは1200bpsなので1日4パスとすると、1日あたり300パケットダウンリンクできます。
SPROUTにおいて、9600bpsダウンリンクを行なえるためもう少し、多めにダウンリンクできることを見込むと2014年6〜7月に初期運用、8〜9月にミッション系確認、10月〜2015年1月に姿勢制御系ミッション、2〜3月に複合膜面展開ミッションとする計画です。
また、複合膜面展開後は面積展開率85パーセントを想定するとおよそ2、3年で軌道降下するであろうと予測をたてています。

それでは次は、システム全体について、修士2年の藤原くん、よろしくおねがいします。

2014年04月25日(Fri): 4-2. 全体システム

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 04:16
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで30日です!】
皆様、こんばんは
修士2年の藤原です。

昨日は,システム設計についての紹介を行っていました.本日は,そのようなシステムを設計した結果SPROUTの全体システムどのようなシステムになったかを紹介したいと思います.

SPROUTの形状は一辺20[cm]の立方体で,質量は7.1[kg]です. 内部構造はミッションが機能するための支援をおこなう衛星バス系(構造・熱系,電源系,通信系,データ処理系),衛星のミッションを直接果たす工学ミッション系(姿勢制御・決定系・カメラ計測系,複合膜面構造系,アマチュア無線系)から成ります.構体の材料にはアルミニウム合金を用い4枚の壁面で立方体を形成し,中央には電池ボックスを配置,各搭載機器は構体に固定し,太陽電池パネルは衛星を覆うように衛星側面に搭載します.また衛星内部構造は,下図のようなシステム構成で構成されています.

システムダイアグラム


FMR1,FMR2は異なる周波数の受信機を搭載しています.FMR1は衛星全体のフライトマネージメトMPUおよびその周辺回路.主に工学ミッション系のアップリンクを受信する受信機を搭載し,アップリンクコマンドを処理するサブシステム.地上局からのアップリンクを受信します.また,FMR2は主にアウトリーチミッションのフライトマネージメントMPUおよびその周辺回路.主にアウトリーチミッション系のアップリンクを受信する受信機を搭載し,アップリンクコマンドを処理するサブシステム.また,FMR1とFMR2はすべてのバス系マイコンと通信ラインが繋がっているため仮にFMR1が故障したとしてもFMR2が同等のミッションを行なうことが出来る冗長設計になっています.また,FMR1,FMR2,EPS,CW,RTCのようなバス系にはSEEDS-IIで宇宙実証済みである信頼性のあるMPUを使用しています.また,CDH1が主に工学ミッション系のコマンドとデータを処理し,CDH2が主にアウトリーチミッション系のコマンドとデータを処理しています.また,FMR1,2同様に仮にCDH1が故障したとしてもCDH2からも同等のミッションが行えるよう設計しています.以上が全体システムです.

明日からは各システムの説明を行っていきます.
明日は,吉野君が通信系設計の紹介します.

2014年04月25日(Fri): 4-3. 通信系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:23
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで29日です!】
皆様、こんばんは。
修士2年の吉野です。

昨日の全体システムから引き継ぎ、今日からはSPROUTのサブシステム(OBC、電源、カメラetc.)について紹介していきます。初回の本日は通信系サブシステム設計についてです。

SPROUTでは、①地上局から送信された工学/アウトリーチミッション系のアップリンクを受信・処理して衛星全体のフライトマネージメントを行うFMRサブシステム(Flight Management Receiver ― )、②衛星の電池電圧や発電量などの衛星の動作状況(ハウスキーピングデータ)をモールス信号として衛星から送信するCWサブシステム(Continuous Wave ― )を通信系サブシステムと呼んでいます。

■FMRサブシステム

FMRは工学ミッション用のFMR1とアウトリーチミッション用のFMR2の2回線があり、これらシステムの大まかな機能は以下のものとなっています。
●地上局からのアップリンクの受信・解析処理・各サブシステムへの命令
●アップリンクコマンドのセキュリティチェック(整合とれたらコマンドを処理)
●工学(FMR1)/アウトリーチ(FMR2)用の2回線且つ互いの代替を務められる冗長設計
●バス系サブシステムのリセット
●アンテナ展開(FMR1とCWからの2信号による展開-2インヒビット-)
FMRはアップリンクを受信・処理するシステムなので、SPROUTではFMRを最上位の命令送信MPUとしています。そのためバス系のリセット等の重要な処理を行うので確実な動作を行う必要があり、SEEDS-IIとほぼ同様の回路構成・システムにしています。

■アップリンクフォーマット

地上局から衛星には上図のようなアップリンクフォーマットに沿って、先頭からコールサイン、セキュリティバイト、強制実行・バス選択バイト、実行時間、コマンド、備考データの順に送信し、日大局と他局のアップリンクの判定にはセキュリティバイトという暗号キーを入れて対処しています。詳しくは今後公開しますコマンドフォーマットをご覧ください。

■CWサブシステム

CWは各サブシステムから衛星の状態に関するデータを収集し、モールス信号による地上へのハウスキーピングデータ送信を行います。発するモールス信号には衛星や運用状況に応じて以下のようなモードがあります。
【初期モード】アンテナ展開後、アップリンクが通るまでのモード。
【通常モード】常用するCWモード、基本的なHKデータを送信する。
【膜面展開前後モード】通常モードに加え、ミッション系の情報も送信する。

上記のフォーマットは、本日ホームページで公開しましたのでそちら(pdfファイル)をご覧ください(随時詳しく更新していきます)。

以上、今回は通信系サブシステムについての紹介でした。明日も引き続き吉野が、SPROUTの電源系サブシステムについてご紹介します。


2014年04月26日(Sat): 4-4. 電源系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:49
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで28日です!】
皆様、こんばんは。
昨日に引き続き修士2年の吉野です。本日は電源系設計について紹介します。

■電源系サブシステム(EPS - Electric Power Supply -)
電源系サブシステムは、太陽電池から発電した電力を二次電池に充電し、電池から供給された電力を昇/降圧・安定化させ各サブシステムに供給する、衛星の中でも重要なシステムです。衛星のミッションを考慮して電池や太陽電池の選定、電力充電・供給回路設計等を行います。大まかにEPSの役割は電池の充電とサブシステムへの電源供給ですが、SPROUTでのEPS設計にはミッションの他、ロケットの搭載等の要求から以下の項目を考慮して設計しました。

■機能・特徴
①サブシステムへの安定した電源供給
②バッテリ状態・過充電・過放電を考慮した充電制御
③打ち上げ時に起動しないよう3インヒビット設計
④運用終了時にスイッチにより充電経路を遮断



●サブシステムへの安定した電源供給
バッテリからの電源供給は昇圧/降圧回路を通して、安定した電源供給を行います。
●バッテリ状態・過充電・過放電を考慮した充電制御
運用を行う際、太陽電池からバッテリへの過剰な充電あるいは電力消費の多いミッションなどでバッテリへの負荷が多いと、バッテリが損傷しその後の運用に問題になる場合があります。そのためバッテリの電圧を監視し充電の制御、衛星の省電力モード、シャント回路による余剰電力消費を行って、バッテリ保護を考慮した充放電を行っています。
●打ち上げ時に起動しないよう3インヒビット設計
衛星が軌道に投入される前に、打ち上げ時の振動などによる機器の故障で衛星に電源が供給されてしまうと、衛星の電波などでロケットや他の衛星に影響を与えて問題になることが考えられます。そのため電源が入るまでに直列に分離検地スイッチを3つ備え、誤動作を防止します(これを3インヒビットといいますが、この設計についてはまた今度)
●運用終了時にスイッチにより充電経路を遮断
衛星の運用終了後、衛星から発する電波が他の衛星に影響を与えないよう考慮して、電池に充電できないようアップリンクにより充電経路をスイッチの切り替えで遮断します。

他にも、バッテリが温度に非常に影響を受けて性能が落ちてしまうなど、ミッションや構体などさまざまなシステムと関わる部分で電力システムは考慮しなければなりませんでした(このバッテリの配置については、明日の構造系設計について、修士1年大日向君から、宜しくお願いします!)

ということで今回は電源系サブシステムについての紹介でした。


2014年04月27日(Sun): 4-5.構造系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:40
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで27日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.本日は構造系の設計について紹介します.

【構造系設計】
SPROUTは小型副衛星として主衛星と共にロケットに搭載されるので,構造系は主衛星に影響を与えないよう,打ち上げる際に考慮されるべき「打ち上げ時の環境情報」と「インターフェース条件」を満たすことが要求されます.ロケットからのインターフェース条件や剛性・加速度荷重・ランダム振動環境条件などの構造的要素に加え,アウトガス・中空構造のエア抜きなど,材料・材質一つ一つに細心の注意を払わなければなりません.

ロケットの振動で壊れてしまっては,壊れた部品が主衛星に当たって傷つけてしまうかもしれませんし,真空下でアウトガスが出てしまっては,アウトガスによって主衛星の光学機器を汚してしまうかもしれません.それだけではなく,衛星のシステムが破壊されることなく機能する必要があります.

また,SPROUTには色々な機器を搭載することになるので,それらをうまく配置する必要があります.SPROUTの機器配置は,このようになりました.
機器配置図


SPROUTは約20cm立方でありながら,このように様々な機器が搭載されています.機器配置を考えてもすぐに作り出すわけにはいかず,まずは構造解析を行い,衛星がロケットの振動で壊れないことを確認します.
構造解析


構造解析では,ロケットで予想される荷重を衛星に加えてあげます.それによって,ロケットの振動でも壊れないことを構造解析で確認してから,実際にこの形で衛星を作り出すことになります.

構造解析で大丈夫なことが分かったからといって,いきなりフライトモデルを作るわけではありません.まず一度,エンジニアリングモデルという試験用のモデルを作って,振動試験で少し強めに振ってあげることで,実際に大丈夫かどうかを確認します.
振動試験の様子


それ以外にも,衝撃試験なども行い,それぞれの試験をパスしたうえで,本当のフライトモデルが完成となります.

こうして完成したSPROUTのフライトモデルはこのようになりました.
SPROUT_FMSPROUT_FM


振動・衝撃試験で耐えてくれたSPROUTは,きっとロケットの振動にも耐えてくれると自信を持っています!
以上,今回は構造系の設計についての紹介でした.明日は,熱系の設計に関して,修士2年の藤原さん宜しくお願いします!

2014年04月28日(Mon): 4-6 熱系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 20:53
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで26日です!】
皆様、こんばんは。
修士2年の藤原です。本日は熱系設計について紹介します。

【熱系設計】
SPROUTは,宇宙空間ですべての機器が動作する温度内に収まるように設計する必要があります.宇宙環境は-270℃でありとても寒い環境であるとともに,人工衛星に太陽光が当たる時と当たらない時では大きな温度差があり,各機器の動作温度範囲を超えてしまう危険性があります.また,SPROUTの場合は,大きさが小さいことや発電電力が小さいことから大型衛星のような熱制御が出来ないためヒータを使わない受動的な熱制御をしています.
熱制御方式としては,低温で性能の悪くなることが予想されるバッテリを中央部に配置し,そのバッテリを挟むように高電力を使用する送信機と受信機で構成しています.また,構体表面には,熱的特性が良いアルマイト加工を行っています.
また,このような構成に設計後すべての機器が正常な温度に収めっているか確認する必要があるため,熱解析を行います.下の図が熱解析を行った結果です.

解析結果

外面パネルは,-30℃から30℃の間と温度がかなり振れているように見えますが,中の機器については,0℃から10℃程度となっておりすべての機器が動作温度範囲内に収まっていることを確認しました.この結果を用いて,このような解析結果で得られた温度でも正常に動作するか確認するため,恒温槽試験を行います.また,恒温槽試験において正常に動作するかを確認出来次第,熱真空槽試験にて温度と真空化の両方の環境でも正常に動作するかを確認します.SPROUTでは,恒温槽試験にてすべての機器の動作確認を行い,正常に動作することを確認しました.また熱真空試験においては,すべての機器の動作確認とともに何処かの機器にヒートスポットが出来ていないかの確認するため,いくつかの温度センサを貼り付け温度確認をしながら動作確認を行いました.
恒温槽試験熱真空槽試験

今後,熱構造系としては,ロケットの打ち上げ時期が決まったこともあり,SPROTのTLEを用いての温度予測や打ち上げ後には実際の軌道上の温度と解析の結果がどのように違うかまたフィードバックを行い,解析の精度上げバッテリの温度などを予測し運用計画に混ぜ込みたいと考えています.

以上,今回は熱系設計についての紹介でした.明日は,カメラ系設計に関して,修士2年の三田君宜しくお願いします!

2014年04月29日(Tue): 4-7. カメラ系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 18:06
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで25日です!】
皆様,こんにちは.
お久しぶりに登場の修士2年の三田です.
SPROUTの打ち上げが1ヶ月を切っていることに時の流れの早さを感じております.
SPROUTマスターになろう!
本日はカメラ系システムの設計について紹介します!

SPROUTにはカメラが3つ搭載されています.以前お伝えしました通り工学ミッション(複合膜面展開)に2つ(通称CAM1・CAM2),アウトリーチミッションに1つ(通称CAM3)用います.工学ミッション時にはCAM1システムとCAM2システムが同期を取って撮影します.複合膜面の展開挙動を複合膜面構造物に添付された再帰性反射テープを特徴点とし,展開時および展開後の画像における特徴点の3次元位置をステレオ視によって復元することを目的としています.そのため,複合膜面構造物の大きさ,角度,膜とカメラの相対的な取り付け位置から,水平,垂直の画角が65°以上,82°以上のカメラによって撮影を行います.

三次元位置復元


CAM1,2システムはCDH1またはCDH2からのコマンドにより実行されます.複合膜面構造物の展開コマンドの際にはCDHからのコマンドにより待機となり,INFからのフラグにより撮影を行うシステムとなっています.CAM3システムはCDH2からのコマンドにより実行されます.ADCシャッターの際にはCDH2からのコマンドにより待機となり,ADCからのフラグにより撮影を行います.撮影枚数はCAM1,CAM2システムが最大14枚,CAM3システムが最大6枚まで撮影可能です.また,連続撮影の際にシャッターを切る間隔をアップリンクにより変更することが可能です.

CAMフローチャート


撮影された画像はROMに保存されるのですが,画像データの処理に用いられるMPUとカメラの動作速度が異なるため,データラインを直接繋いでしまうとデータ保存が出来ません.そこで,FIFOと呼ばれる素子に一時的にデータを保存し,その後ROMに保存するシステム構成となっています.FIFOはFirst In First Outの略で最初に入ってきたものを最初に処理する『ところてん式』とイメージして頂ければわかりやすいと思います.また,軌道上で複合膜面構造物の展開を行う場合,太陽や地球の逆光によって展開の撮影が困難になるため衛星が日陰時に撮影を行います.そのため,日陰時に膜面を照らし,安定した光源のもと撮影を行うためにCAM1,CAM2システムが取り付けられる構体面にパワーLEDを取り付けます.
CAM1,2システムとCAM3システムはROMの数やパワーLED,シャッターフラグを送るシステム(INFかADC)の違いはありますが,ほぼ同じシステムと言えます.

システムダイアグラム


簡単にですが,SPROUTのCAM系システムの紹介は以上です.
明日は膜展開設計をM1丸木がお送りします!
SPROUT CAM班 Mita

2014年04月30日(Wed): 4-8.膜展開系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:09
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで24日です!】

皆様,こんにちは.
修士1年の丸木です.
SPROUTマスターになろう!
本日は膜展開系の設計についてご紹介します.

膜展開システムは,膜展開を制御する電子回路から,ガスカートリッジや配管,膜面,チューブなど様々なハードから構成されます.もちろん,膜展開時に重要となるセンサ類もあります.となると,それに応じて回路も決まってきます.例えばセンサからの信号処理回路やSMA伸展に要する大きな電圧を生むための昇圧回路などです.

INFシステムブロック図1

INFシステムブロック図2


【膜面展開シーケンス】
膜面展開のシーケンスは下図のようになります.
衛星の状態が万全であることを確認したら,普段はオフになっているミッション系の電源を入れ,衛星のバッテリが消耗しても省電力モードに入らないようコマンドを送ります.メインミッションのために勝負に出る訳です.そして,CWがミッション専用のモードに入ります.
以上のコマンドが衛星に処理されると,いよいよ膜面展開が始まります.まずはCDH,ADC,INF(膜展開系)のセンシングが始まります.INFでは,圧力センサと振動を計測するピエゾセンサのセンシングをします.
次に,膜とチューブが入っている収納機構のフタを解放します.先日お伝えした一次展開です.その際,フタにはマイクロスイッチが取り付けられていて,マイコンがこれを検知します.その検知とともにSMAバルブの加熱が始まります.SMAバルブがガスカートリッジの封を開けると,ガスが配管内に流入し,圧力センサでこれを検知します.するとマイコンは電磁バルブを制御してチューブを伸展させるのです.


膜展開シーケンス


【センサ】
センサには圧力センサ,ピエゾセンサがあります.圧力センサはその名の通り圧力を測定するためのセンサで,一つはガスカートリッジからレギュレータまでの間の非常に高い圧力を測り,もう一つはチューブに入る直前の圧力を測ります.
 一方,ピエゾセンサはチューブに張り付けてありますが,これは固有振動数の測定に用います.

圧力センサピエゾセンサ



【収納機構】
 膜とチューブが折り畳まれて収納されているボックスです.膜とチューブはなかなかぎゅうぎゅうに押し込められており,入れる際は5人がかりで収納しました.
 フタは強度の強い糸で留められていて,電熱線の加熱で焼き切って開きます.すると,フタの両側に取り付けられたマイクロスイッチがオフになり,マイコンがそれを検知します.

収納機構

収納


【ガスオープン】
ガスが入っているタンクをガスカートリッジと呼んでいますが,このガスカートリッジはミッションの直前まで完全に封をしてあります.封を開き,ガスを配管内部に注入する役割を担うのがSMAバルブです.SMAというのはShape Memory Alloynoの略で形状記憶合金のことです.熱を加えることでSMAの伸展によりニードルが押し当てられ,ガスカートリッジの封を開けます.ガスカートリッジを開ける役目なのでSMAバルブと呼んでいます.ここで,SMAを加熱する際に電熱線に印加しますが,ここで多くの電力が必要となります.

ガスカートリッジ

SMAニードル伸展

SMA2


【配管・電磁バルブ】
ガスカートリッジの封が開けられるとガスが配管内に流れ込みます.しかし,このときとても大きな圧力で流れ込んでくるので,そのままだとチューブの展開を制御するための電磁バルブやチューブが耐えられません.そのためレギュレータを用いて減圧します.どのくらい減圧されるのかというと,およそ12MPaから320~330kPa程度まで落としてくれます.
ガスレギュレータを通ったガスが次に対面するのが電磁バルブです.電磁バルブは二種類あり,一つは配管とチューブ間を,もう一つはチューブと宇宙空間を繋げています.電磁バルブはマイコンによって制御し,チューブに流入するガスの圧力をみながら弁の調節をすると共に,展開後しばらくしてからチューブ内のガスを宇宙へ解放します.

ガスレギュレータ電磁バルブ

電磁バルブの仕組み


【膜面・チューブ】
 膜面は一辺が1540mmの正三角形で(収納機構内部に40mm隠れてしまいますが),各所に昨日お伝えしたカメラシステムで捉えるための特徴点が設けられています.素材は合成樹脂のポリイミドで,12.5µm程の薄さですが,ぎゅうぎゅう詰めにされたり,チューブに引っ張られても大丈夫です.ポリイミドは放射線や紫外線には強いのですが,低い軌道上に存在する,原子状酸素には弱く,表面をアルミ蒸着でコーティングしてこれを防ぎます.
チューブは膜面の外側についているため,膜面の一辺よりやや長く,こちらも同様に特徴点が設けられています.特徴点は再帰性反射テープを用いていて,パワーLEDを点灯することで宇宙空間でも撮影することができます.チューブはアルミラミネートフィルムという素材を用いており,ガスが注入された際に一定の圧力が加えられると塑性硬化を起こし,特に大きな力が作用しない限り,その後は形状を保ちます.

膜面再帰性反射テープ



以上が一通りの膜展開系の紹介になります.
本日は長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます.
メインミッションを担う膜展開系についてわかって頂けたでしょうか.
SPROUTのホームページの一部でも紹介しておりますので,ぜひご覧ください.

明日は姿勢決定・制御系の設計に関しましてM1の大日向がご紹介します.

2014年05月01日(Thu): 4-9.姿勢決定・制御系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 14:51
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで23日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.
SPROUTマスターになろう!本日は姿勢決定・制御系の設計についてご紹介します.

姿勢決定・制御システムは,姿勢決定をするための太陽センサ,地磁気センサ,ジャイロセンサなどの姿勢を検出するセンサや,姿勢制御をするためのアクチュエータとなる磁気トルカ,姿勢決定・制御の演算処理をするためのMPUなどのハードウェアで構成されています.
ADCシステム図


姿勢決定・制御システムは,ハードウェアだけではなくソフトウェアの設計もしっかりしていかなければなりません.以下,ハードウェアの設計と,ソフトウェアの設計についてご紹介したいと思います.

【ハードウェアの設計】
■磁気トルカ
磁気トルカは,日大で自作を行っています.まず,磁気トルカの設計をするにあたり,出力が外乱に打ち勝ち,姿勢制御が行なわなければなりません.宇宙空間では,大気抵抗トルクや,太陽輻射圧トルク,残留磁気トルクなど,様々な外部からの力(外乱)が加わります.そのため,外乱がどれぐらいの大きさになるのかを見積もり,それに打ち勝つ強さをもった磁気トルカを製作します.

磁気トルカはコア材にコイル線を巻き付けることによって製作します.ここで,ムラなくコア材にコイル線を巻き付けることが重要となります.そこで,巻線機を自作し,それを用いてコア材にコイル線を巻き付けることにしました.
巻線機


手動でコイル線を巻くこともできますが,巻線機にはモーターが取り付けられているので,コア材を回転させることによって,コイル線を自動で巻くこともできます.
こうして,SPROUTの磁気トルカが作られました.
磁気トルカ


■太陽センサ
太陽センサも,日大で自作を行っています.
太陽センサ


太陽センサの検出角は,誤差の大きさなど,色々と検討を行った結果,±55[deg.]となりました.衛星からみた全方向を検出できるようにカバーしなければなりませんので,CADを用いて,全方向がカバーできるように太陽センサを配置しました.
太陽センサ検出角太陽センサ検出角


こうして,太陽方向をすべて検出できるように太陽センサと配置が考えられ,設計されていきました.

【ソフトウェアの設計】
ソフトウェアに関しても,きちんとした設計が必要となります.姿勢決定・制御系では,姿勢制御の演算処理を行なう必要があります.磁気トルカは小さい力しか出すことができないので,宇宙空間では制御することができますが,地上での検証が困難となります.そのため,姿勢シミュレータを自作し,何度も姿勢シミュレーションを行うことによって,ソフトウェアに反映することを繰り返し,ソフトウェアを作り込んでいくことになります.
ソフトウェア設計の流れ


そのため,下図のような構成で,姿勢シミュレータの自作を行いました.
姿勢シミュレータ


姿勢シミュレータを作るにあたり,各プログラムの箱の入力と出力を明らかにする(例えば,姿勢制御則の入力は姿勢角で,出力は磁気モーメントなど)ことによって,完成したプログラムの箱をそのままSPROUTに反映させます.

また,SPROUTの姿勢決定・制御系の開発言語はC言語なのですが,姿勢シミュレータも同様にC言語で作ることによって,シミュレータで作られたプログラムをそのままSPROUTに反映させることができるようになっています.

一例として,衛星の回転を抑制させるデスピン制御のシミュレーション結果を紹介します.
デスピン制御


地上では実機を用いた検証が難しいため,このように数値計算で衛星の運動をシミュレーションしてあげます.このように,シミュレーションがうまくいったプログラムが,SPROUTに搭載されることになるのです.

以上,姿勢決定・制御システムの設計の紹介でした.
このように,色々と試行錯誤の末,姿勢決定・制御システムが作られてきました.まだ数値計算上でした姿勢制御が行なえていないので,実際の宇宙ではどのような運動をするか,どきどきしています.

明日は,データ処理系設計に関して,修士2年の三田さん宜しくお願いします!

2014年05月02日(Fri): 4-10.データ処理系設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 18:46
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで22日です!】
皆様,こんにちは.
修士2年の三田です.
SPROUTマスターになろう!
本日はデータ処理系の設計についてご紹介します!

皆様お気づきかと思いますが,SPLOGでのSPROUT紹介では番号がついていたのです.
No.0は概要
No.1はアマチュアミッション
No.2は膜面展開ミッション
No.3は姿勢決定・制御ミッション
といった感じで...
そして現在のNo.4は衛星の設計について書いてきております!
SPROUTの全体システムから始まり,各サブシステム設計と説明してきました.
それではデータ処理系の設計について説明致します!
SPROUTのミッションである膜面展開,姿勢制御,アマチュアミッションはINF,ADC,CAMなど色々なシステムがセンサデータや画像を取得しております.そのセンサデータや画像,さらにはハウスキーピングデータ(衛星の状態を表すデータ)を処理しているのがCDH(データ処理システム)になります.CDHで各システムが取得したデータを受け取り,メモリに保存し,送信機にデータを送ることを目的としています.また,FMRが地上局から受信したコマンドを各種サブシステムに命令送信する役割も担っています.
データ処理系システムでは衛星時間をカウントするRTCシステムも搭載しています.RTCでは衛星放出後からの衛星の時間を計測し,さらにはSPROUTに搭載されている全MPUのリセット回数を数えることをしています.各システムの繋がりは全体システムの回を参照して頂ければと思います.
SPROUTでは各系のシステムが専用のFEPROMを搭載しています.各システムが直接ダウンリンク出来るわけではないため,各システムで取得したデータをダウンリンクする際にはROM間のデータ移動が必要となります.

ROM通信


CDHには工学ミッションを行うCDH1とアウトリーチミッションを行うCDH2と2つのデータ処理システムがあります.2つのシステムはデータ処理を行う意味では同じなのですが,CDH1では9600bpsでのダウンリンクが可能であったり,CDH2ではデジトーカやSSTVといったようにCDH1,2それぞれにユニークな機能が搭載されています.データ処理系に共通していることはアップリンクからダウンリンクまでを管理しています.
①地上局よりコマンドをアップリンクする.
②FMRにてコマンドを受信する.
③CDHがコマンドを判別,コマンドに応じて各マイコンに命令を送る.
④CDHがダウンリンクコマンドを受け取った場合は,FM送信機よりデータを送信する.
といった具合にデータ処理がなされています!

一連の流れ


各システムが取得したデータを地上に送るデータ処理システムの簡単な説明でした.
明日はNo.4の最後,インヒビット設計について修士2年吉野が説明します!
SPROUT CDH班 Mita

2014年05月03日(Sat): 4-11.インヒビット設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 18:06
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで21日です!】
皆様,こんにちは.修士2年の吉野です.
SPROUTマスターになろう!
本日は「インヒビット設計」についてご紹介します.

そもそもインヒビット“inhibit”は、【inhibit:抑制する、妨げるetc.】という意味ですが、
SPROUTのインヒビット設計について言えば代表的なもので、
●衛星電力供給
●アンテナ展開用ニクロム線電源供給
●SMAバルブ回路電源供給
●(分離機構電源供給…これについてはまた明後日!)
これらの動作に対して、打ち上げ時の不意な誤動作を抑制する設計の考え方を指します。

SPROUTはH-IIAロケットの相乗り衛星として搭載され打ち上げられますが、その打ち上げの際に生じる振動・衝撃等によって衛星搭載機器が故障した場合、不意な誤動作(電波発生・膜面展開)が発生、その結果ロケットや他の主・相乗り衛星の損傷・破壊につながることが考えられます(そうならないように今まで環境試験で確認してきました)。その際の冗長設計としてインヒビット設計を組み込んでいます。これらは衛星側・ロケット側からの要求をまとめて、システムの安全性の確認として設計・実験を通した評価を行ってきました。

●アンテナ展開用ニクロム線電源供給
衛星に電源供給されるとアンテナ展開用のタイマーIC×4が作動・数分カウントした後の出力信号によりアンテナ展開動作を行う仕組みになっています。またアンテナを取り付けているワイヤーを2系統備え、2系統すべてをニクロム線から成る溶断機構により溶断しアンテナが展開します。

●SMAバルブ回路電源供給
SMAバルブの電源供給には①衛星への電源供給、②INFマイコンへの電源供給、③INFコマンドによるSMAバルブ電源供給、のインヒビット化によりハザードを抑制しています。

●衛星電力供給
打ち上げ時に衛星のシステムが起動しないように、分離機構からの放出を検知するスイッチ(放出検知スイッチ)を3つ搭載し、全スイッチがONになることで初めて衛星への電源供給が可能になります。また振動・衝撃試験中においてはこれらスイッチの開閉状況を確認する試験も行います(これについては環境試験紹介の時に)。


以上インヒビット設計についてでした。今回までは衛星の設計について紹介させて頂きましたが、明日・明後日の2日間は衛星を軌道上に投入する分離機構”N-POD”についてご紹介いたします。

2014年05月04日(Sun): 5-1.分離機構 概要

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 22:54
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで20日です!】
皆様,こんにちは.昨日に引き続き修士2年の吉野です.

SPROUTマスターになろう!
今日からの二日間は、衛星を軌道投入する独自開発のPOD型分離機構”N-POD”について、全体概要と詳細設計(明日)についてご紹介いたします。

■独自開発分離機構“N-POD”


一般的に、人工衛星はロケットに搭載された後各衛星が投入される高度まで運搬され、各高度到達後軌道投入されます。その中で、今回設計開発したN-PODは衛星を軌道上へ放出することがミッションになっています。

■N-POD概要
①衛星収納から放出までの流れ
衛星は分離機構側面から収納し、展開蓋を保持展開機構(HRM)によって固定した後ロケット側へ引き渡され、ロケット内部に取り付けられます。打ち上げ後ロケットからの電気信号をもって蓋の保持展開機構を動作、最終的に内部にある押し出しバネによりびっくり箱の要領で衛星を押出して軌道上に投入します。

②設計開発
構造的には打ち上げ時の振動・衝撃にも耐えられるよう頑丈で変形しづらい材料・機構で設計し、衛星押出し時の分離速度の減衰を小さくするために内部にガイドレールを設け表面処理を行うなどを考慮しています。電気的な部分では、ノイズ等の影響で誤動作が発生しないようインヒビット設計した制御基板をPOD側面の制御ボックス内に取り付けており、ロケットからの制御信号を受信することで展開蓋を保持する保持展開機構(HRM)のニクロムカッタへ電力供給・展開動作を行っています。また分離機構がロケットとのインターフェースとなっているため、ロケット・衛星間での取り決めの元、構造的・電気的インターフェースの決定・設計を行い、構造的にも電気的にも条件を満たせるか環境試験による実験・解析を行ってきました。

■分離機構搭載品・仕様
寸法:343×400×400[mm](台座込み)
搭載方式:側面搭載方式
分離方式:分離バネ放出方式
電気的I/F:ディスクリート信号により分離(2インヒビット)
展開方式:ニクロム線によるワイヤーカッタ方式、展開後ロック機構付きバネヒンジによりロック
誤展開防止:通電回路の3インヒビット設計
主な構成品:衛星搭載部(パネル、押し出しバネ・板、ガイドレール、)、保持解放機構、制御ボックス(基板、電池)、台座

以上簡単ですが本日は分離機構の概要の紹介でした。明日は分離機構の構造的・電気的な詳細設計についてです。

2014年05月05日(Mon): 5-2.分離機構 設計

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 11:15
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで19日です!】
皆様,こんにちは.ブログ3日目の修士2年吉野です.
SPROUTマスターになろう!
本日は分離機構N-PODの設計(構造、電気系)についての紹介です。

■設計要求
N-PODのミッションは軌道投入高度まで衛星を把持しロケット信号により衛星を宇宙空間へ放出してあげることです。設計する上で衛星側・ロケット側から以下のものが主な要求として挙げられます。
【分離機構・衛星】
●打ち上げ中の衛星の収納  ●ロケット分離信号による分離
●衛星の分離に対する適切な耐故障性
【ロケット】
●質量特性、包絡域、剛性(固有振動数)、機械環境
●ロケットと分離機構間の構造的・電気的結合、分離速度
●誤展開防止  ●打ち上げ環境(温度・気圧)の適応、アウトガス

■構造設計

衛星を搭載するPOD部分は打ち上げ時の振動に耐えられるよう厚み・材料用いて設計(数値解析にかけて検討)され、衛星分離方向のパネルから衛星を収納しますが、この収納・放出する際に衛星に触れる部分には表面処理を行ったガイドレールを設け、分離速度の減衰を抑えて押し出しバネ・板により放出されます(この分離速度を考慮して数値計算からバネ定数を決定し、解析・実験から評価します)。衛星分離方向のパネルは①ロケットから2つの信号を受け、②制御基板が動作し保持解放機構(HRM)のニクロム線へ電力供給、③ニクロム線がワイヤーをヒートカットして開放し、解放されたパネルは衛星の分離を妨害しないよう120deg.の角度でラッチを掛けています。HRMは下図のような構造で赤色のワイヤーを焼切りバネによりパネルの保持が外れる仕組みです。


■電気設計

制御ボックス内にある分離機構制御基板は上図のような設計になっています。展開動作はロケットからの信号(分離許可信号・分離信号)を受信することを起点とし、基板上のリレースイッチが動作・そのスイッチを通してバッテリ電源からHRMのニクロム線へ電力供給を行いヒートカットすることができます。以上のシステムの内ロケット信号やスイッチを複数にすることでHRMの誤動作を防止しています。

以上、二日間に渡って分離機構N-PODについて紹介してきました。明日から1週間は宇宙環境を模擬して衛星の機能・性能を評価する“環境試験”についてです。
(振動試験、衝撃試験、恒温槽試験、熱真空試験、通信試験、運用試験、ベイクアウト)
ということで明日は修士1年の大日向くんからロケットの打ち上げ振動の影響を評価する振動試験の紹介です。宜しくお願いします。



2014年05月06日(Tue): 6-1.振動試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 17:39
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで18日です!】
皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.

SPROUTマスターになろう!本日から1週間,各種環境試験(振動試験,衝撃試験,恒温槽試験,熱真空試験,通信試験,運用試験,ベイクアウト)に関して,紹介していきたいと思います.その中でも,本日は振動試験について紹介していきます.

振動試験
衛星は,H-IIAロケット搭載時,打ち上げ時には大きな振動を受けることとなります.ロケットの打ち上げ振動でもし衛星が壊れてしまったら,ロケットや主衛星に部品がぶつかって,傷をつけてしまう可能性があります.そういったことは,副衛星ですから,絶対に起こしてはいけません.
また,それだけではなく,ロケットの振動に耐えることができなければ自分たちが思い描くミッションをきちんとこなすことが出来ない可能性がありますから,きちんと試験をして大丈夫であることをいう必要があります.その試験が,振動試験と呼ばれています.
SPROUTN-POD


振動試験では,振動試験機をお借りして,実際のロケットの振動を模擬した振動をかけることになります.ロケットの種類によって,ロケットの振動の仕方が異なりますので,きちんとH-IIAロケットの振動の模擬をします.
また,振動試験では,振動のレベルが2通りあり,それぞれ
・QT(Qualification Test):認定試験
・AT(Acceptance Test):受入試験

と呼ばれています.QTレベルの試験は,衛星の試験用のプロトタイプモデルを使用し,打ち上げ環境より厳しい条件で振動をかけ,衛星がどの程度耐えられるのか実証する試験となっています.QTレベルの試験に耐えることができる構造は,実際のロケットの振動でも耐えることができるだろう,と実証されるので,そこでフライトモデルの設計に進むことになります.
ATレベルの試験は,衛星のフライトモデルをより実際のロケットの振動に近い条件で振動させることによって,フライトモデルが振動に耐えられる構造になっているかを実証する試験です.実際の打ち上げるフライトモデルでは,衛星へのダメージを防ぐために,QTレベルの試験は行いません.ATレベルの試験によって,フライトモデルがロケットの振動に耐えられる構造になっているかどうか分かりますので,その試験によって,ロケットへの搭載の可否の判断がされることになります.
QT/AT


ただ壊れていないことを外観チェックすること以外に,とても重要な確認ポイントがあります.それが「固有振動数のチェック」です.構造物にはそれぞれ固有振動数(~Hzと呼ばれるもの)をもっています.また,ロケットも打ち上げ時に振動しますので,衛星の固有振動数が,ロケットの振動数に近くなってしまいますと,「共振」と呼ばれる現象が起きてしまい,急激に衛星が大きく振動し始めて,壊れてしまう可能性があります.そのため,ロケットの振動と衛星の固有振動数が離れていることを振動試験で確認することになります.
振動試験の様子振動試験の様子


SPROUTは,振動試験を無事通過しましたので,H-IIAロケットで打ち上げられることで可能になりました.振動試験は毎回ドキドキでしたが,無事通過してくれたので,ロケットの振動にも耐えてくれるという自信があります!

以上,本日は振動試験の紹介でした.明日は引き続き大日向が,衝撃試験について紹介していきたいと思います!
SPROUT STR Ohinata

2014年05月07日(Wed): 6-2.衝撃試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 21:25
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで17日です!】

皆さま,こんにちは.
修士1年の大日向です.

SPROUTマスターになろう!昨日に引き続き,環境試験について紹介していきたいと思います.本日は,衝撃試験について紹介していきます.

【衝撃試験】
ロケットに搭載されるとき,衛星はフェアリングで保護された状態で打ち上がることになります.フェアリング内に衛星がいるので,ロケットが宇宙に打ち上がったら,フェアリングを分離してから衛星を放出することになります.ロケットがフェアリングを分離する方法は,火工品を爆発させて分離することになるため,少し強い衝撃が衛星に加わります.その衝撃で衛星が壊れないかどうか試験する必要があります.
フェアリング分離

振動試験でお伝えした時と同じで,フェアリング分離時の衝撃で,もし衛星が壊れてしまったら,ロケットや主衛星に部品がぶつかって,傷をつけてしまう可能性があります.そういったことは,副衛星ですから,絶対に起こしてはいけません.
分離機構分離機構

衝撃試験でも,衝撃試験機をお借りして,実際のフェアリング分離時の衝撃を模擬した衝撃を加えることになります.
衝撃試験は,振動試験と少し考え方が違っていて,プロトタイプモデルとフライトモデル,共に同じレベルの衝撃を加えることとなります.衝撃ですから,プロトタイプモデルが大きな衝撃を加えるとなるとその分壊れる可能性も大きくなりますので,そういったことはせず,基本的には,実際にフェアリング分離時に予想される衝撃を上回る衝撃を加えてあげればよいです.同じレベルの衝撃をプロトタイプモデルでは2回与えることによって,衝撃耐性があるかどうかを実証しています.

衝撃を加える方法は様々あり,例えば火工品を使用するものや,落下式などの剛体運動によるもの,ガス銃や打撃装置などによる伝搬波によるものなどがあります.SPROUTでは,ガス銃と打撃装置を用いて衝撃試験を行いました.
衝撃試験の様子

直接衛星に衝撃を加えてしまうと,その衝撃で機構が変形してしまうかもしれませんし,実際はロケットとの接合部から衝撃が伝わるので,それを模擬するために,上の図のような衝撃板を用いて,衝撃を加えることになります.

衝撃を加えると,衝撃板は,このように変形してしまいます.
衝撃板

衝撃はいかに大きなものかがこれで分かるかとおもいます(テストショットを何回かしているので,傷だらけですが...).SPROUTは無事,この衝撃試験を通過することができました.きっと,実際にフライトモデルが軌道上で衝撃が加わったとしても,耐えてくれると自信を持っています!

以上,本日は衝撃試験についての紹介でした.明日は,恒温槽試験について,修士2年の藤原さん,宜しくお願いします!
SPROUT STR Ohinata

2014年05月08日(Thu): 6-3.恒温槽試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:01
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで16日です!】

皆さま,こんにちは.
修士2年の藤原です.

SPROUTマスターになろう!昨日は衝撃試験について紹介していたので,本日は,恒温槽試験について紹介します.

【恒温槽試験】
熱系設計でも述べましたが,SPROUTは軌道上では衛星構体表面は高温にも低温にもなることが予想されます.そのため,SPROUTの衛星すべての機器が軌道上の温度に耐えることが出来るかあらかじめ確認しなくてはなりません.ほとんどの機器にはデータシートに記載されている動作温度範囲をみることでSPROUTの機器が正常に動作することが出来るかどうかという確認することはできますが,衛星が宇宙に行ってからでは,直すことも出来ないため確実に動作するか確認する必要があります.単体の機器について言えば,データシート通りに動作するか確認する必要がありますし,全ての機器が搭載された状態では,温度によって配線の抵抗値が上がり下がりすることで,常温では正常に動作していたものが動作しなくなってしまう可能性もあります.また,バッテリは低温で性能が悪くなるため低温時では全ての動作が出来ないかもしれません.そのため,SPROUTでは恒温槽試験を行いました.また,温度条件は以下の図の熱解析のバッテリの温度の最大温度と最小温度に15℃マージンを取った値で試験をしました.

熱解析結果


その結果SPROUTでは,恒温槽の設定温度を最低温度を-20℃,最高温度を30℃に設定して行いました.また,外面に配置されている機器にも動作確認をする必要があるため,外面の機器については,恒温槽の設定温度を最低温度は-50℃,最高温度は50℃に設定して行いました.また,温度センサのキャリブレーションを行いました.

恒温槽試験様子


SPROUTは無事,恒温槽試験で不具合箇所がない状態でロケットに引き渡すことが出来ました.そのため軌道上の温度でもSPROUTは問題なく動作すると自身を持っています.

以上,本日は恒温槽試験についての紹介でした.明日も引き続き熱真空試験を藤原が紹介いたします.

2014年05月09日(Fri): 6-4.熱真空試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 20:31
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで15日です!】

皆さま,こんにちは.
修士2年の藤原です.

SPROUTマスターになろう!昨日は恒温槽試験について紹介していたので,本日は,熱真空試験について紹介します.

【熱真空試験】
恒温槽試験でSPROUTのシステムが軌道上の温度環境で正常に動作することを確認してきました.その上で,より宇宙に近い環境での試験として,温度環境プラス真空環境でも動作するか確認する必要があります.そのため以下に示すような熱真空槽にいれて試験をします.
恒温槽試験で温度環境でのシステムの健全性確認が可能であり,真空槽試験で真空化でのシステムの健全性確認が可能であるため,真空試験と恒温槽試験を個別に試験すれば良いとも思えますが,高温時や低温時に真空化でシステムの確認というものはとても重要です.その理由としては,軌道上温度環境化且つ真空で機器の性能が変わってしまうような機器もあるかもしれません.また,真空化であると熱の移動は,大気化と違い対流による熱を伝えるものがありません.そのため,温度がかたよってしまい局部的に高温になる機器があるかもしれないためそのような熱の伝わりがしっかり行われているのか確認する必要があります.

熱真空槽SPROUT


 また,熱真空槽にはいくつかの種類があります.SPROUTで使用した熱真空槽には上の図のような熱真空槽を使用しました.この熱真空槽は,ベースプレート(下面のパネル)から加熱され,熱真空槽の周りに液体窒素を流すことにより熱真空槽の周りを冷やし輻射によって衛星を冷却します.
また,熱真空試験には,サイクル試験と熱平衡試験の2種類がありますがSPROUTでは,前者のサイクル試験をおこないました.温度条件は,バッテリの温度が-20℃~30℃の環境化で試験を行いました.また,高温槽と違いすべての機器が同じ温度にならないため外部からも温度センサを取り付け機器の温度が一つだけたくなったりしてないかの確認を行いました.下のグラフが熱真空試験での各機器の温度です.

熱真空試験の温度履歴


 このような温度プロファイルで行った結果熱真空試験は無事に異常なくシステムの動作確認が行えたため,熱真空化においてもSPROUTは正常に動作する衛星だということがわかったため,軌道上でも問題なく運用することが可能な衛星と言えます!

以上,本日は熱真空試験についての紹介でした.明日は,通信試験について,修士2年の三田君,宜しくお願いします!

2014年05月10日(Sat): 6-5. 通信試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 13:10
Author: sprout
皆さま,こんにちは!
気づけばSPROUT打ち上げまで2週間となってしまいました...
月日が経つのは早いなと感じている修士2年三田です.
SPROUTマスターになろう!本日は通信試験について紹介します!

SPROUTが宇宙空間に放出されると高度650km付近を周回することになります.放出された衛星が地上と正確に通信出来るかを宇宙でいきなり実証するわけにもいかないので,通信試験で日大局と距離が離れた場所で正確に通信出来るかを確認します.
通信試験では地上局からのアップリンク,CW通信・FM通信でのダウンリンクが行えることを目的としています.さらにはデコード率の確認やSPROUTの工学ミッションである膜面展開によって通信に影響がないか確認を行います.

地上システム


SPROUTの通信試験では正常にダウンリンクすることができました.また,膜面が展開後も地上局からのアップリンク・ダウンリンクが正常に出来たことを確認しました.SPROUTマスターに近づいてる皆様は画像が2枚目のダウンリンク画像ということがわかっていると思います!

SSTV画像


電波を使った通信では通信間の距離や周波数に応じて電波の強度に損失が生じます.宇宙からの通信でも,地上で行う実験にしても電波が進む大気では非常に減衰・吸収(または錯乱)されやすいことが上げられます.さらに宇宙にある実機の衛星とは異なり大地反射波による損失も考えれます.
SPROUTの通信試験では問題なく送受信出来たのですが,たまにデコードが出来なくなる時があります.実際,日本大学が開発したSEEDSでも違法無線やノイズの影響でデコード出来ない時もあります.調べてみますとエラー原因となるノイズや損失には多々あるのです.

エラー原因のノイズ



2週間後にはSPROUTが正常に電波を宇宙に届けてくれると信じていますので,皆様も我々SPROUTメンバー同様にSPROUTの声を聞くのを楽しみにしていてください!
明日はSPROUTの運用試験について修士2年角川が紹介します!
SPROUT CDH班 Mita

2014年05月11日(Sun): 6-6. 運用試験

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 21:28
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで13日です!】

皆様、こんばんは 修士2年の角川です。
SPROUTマスターになろう!本日は運用試験に関してです。

実際にSPROUTが宇宙でミッションを実現するために設計を行い、その設計がSPROUTが打ち上げられ、宇宙環境にさらされても設計通りの機能が実現されているか検証するために各種環境試験を行って来ました。

各種環境試験における衛星の機能確認は、主に各サブシステムとパソコン間の通信によって行ってきました。つまり、各サブシステムの動作確認は1つ1つのサブシステムの動作状況をPC表示させモニタリングすることによってより詳細に確認を行ってきました。

しかし、SPROUTではアマチュア無線通信の通信容量の制約上、すべてのサブシステムの動作状況をモニタリングするような機能を実装することが困難です。そのため、出来るだけ少ない情報量で衛星の動作状況を知ることが出来る設計が求められていました。SPROUTの運用では衛星の動作状況は主に
・コマンドが実行されたかどうか
・各サブシステムの電源状態
・各サブシステムのコマンド処理状態(コマンド待機状態か処理中か)
で各サブシステムの動作確認を行えるようになっています。

今回の運用試験は地上局も含め、これらの実際の運用時に得られる情報だけで、衛星を運用していく練習を行い、実際の運用で起こりえる判断のブラッシュアップを行うことが主な目的です。つまり、実際の運用のコンフィギュレーションでの衛星、地上局、オペレーターを含めたend-to-end試験という位置づけです。




より実際に軌道上で想定される条件と等しくなる様に試験の条件を設定します。実際の運用条件とは、日陰と日照のサイクル、熱サイクル、真空、放射線、無重力環境などが想定されますが、今回の運用試験では日陰と日照のサイクルのみを想定することとしました。全ての想定される条件を模擬した中で、このようなend-to-end試験を出来るだけ長時間、行うにこしたことはありませんが、プロジェクトではそのような試験を実現することは出来ません。なぜなら、想定される全ての環境を模擬できる試験装置がそもそもありません。また、部分的に出来たとしても、何週間、何ヶ月も衛星を拘束してしまうと他のやらなければならない試験が消化できなくなってしまうため、スケジュールの面も考慮しなければなりません。

スプラウトは太陽同期軌道ですので、およそ90分で地球を1周します。その中で、およそ日陰が30分、日照が60分のサイクルとなっています。日陰時には太陽光が太陽電池にあたらないのでバッテリーは放電のみ行います。日照時には太陽光が太陽電池にあたっているので、太陽電池が発電を行いバッテリーが充電されます。今回の運用試験ではバッテリーの充電電源を定電圧装置で行っていますが、私たちが保有している定電圧装置では、自動的に充電している状態と、していない状態を切り替える機能がついていないため、この機能を実現する回路を製作し試験を行いました。



試験結果として、実際の運用手順の確認が行えました。特に、環境試験では1つ1つの運用シーケンスを個別で行っていましたが、運用の全体の流れの中で運用シーケンスの確認出来ました。現在もEM機を用いて同様に運用シーケンスのシミュレーションを行っています。

明日はベイクアウト試験について修士2年藤原が紹介します。

2014年05月12日(Mon): 6-7.ベイクアウト

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 17:05
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまで12日です!】

皆様,こんにちは 修士2年の藤原です.
SPROUTマスターになろう!本日はベイクアウトについて説明します.
今日が環境試験シリーズの最終章となります.

ベイクアウトとは,真空環境では有機材料の一部が揮発してしまいます. 揮発した分子は電子回路や可動部に再付着し、衛星の動作に深刻な影響を与えてしまう可能性があります.このような揮発ガスのことをアウトガスと呼びます.SPROUTではアウトガスを放出しないように考慮しケーブル1本から慎重に部品を選定し使用しています.しかし,それでも少なからずアウトガスが放出してしまいます.SPROUTは,小型相乗り副衛星ということもあり,主衛生や他の相乗り副衛星にアウトガスによって影響を与えることにもなり得るため,衛星を宇宙にもって行く前にあらかじめ熱真空槽にいれてアウトガスを放出させておき,宇宙にもって行く時にはアウトガスを放出しないようにしておきます.それがベイクアウトです.
SPROUTで行ったベイクアウトの条件は,アウトガスは高温時に放出しやすいということもあり,温度を35℃以上に設定しベイクアウトを行う時間を24時間行いました.また,この時にアウトガスがどれだけ放出されたかを確認するためにベイクアウト前後の質量計測を行います.下の図がベイクアウトの試験様子です.

ベイクアウト試験様子


また,SPROUTの温度が高すぎても低くなってもいけないため下の図のように熱電対を貼付しベイクアウトを行っている間は,温度を監視します.

熱電対の貼り付け様子


このような試験を行った結果,ベイクアウトを行っている間の温度履歴と圧力履歴は以下のようになりました.

温度,圧力履歴


このようにしてSPROUTではベイクアウトを行いました.また,熱真空試験や真空槽試験をこのベイクアウトを行う前に行っていたこともあり,アウトガスの放出は宇宙上では,ほぼないと考えています.
SPROUTのベイクアウトは以上となります.

明日からは,地上局ソフトについて説明します.まずは,地上局ハードウェアについて山口君が紹介します.

2014年05月13日(Tue): 7-1.地上局ハードウェア

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 18:47
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまであと11日です!】

 皆様、こんにちは。学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう、今回からは地上局システムの開発について説明したいと思います。
 人工衛星の開発の一つに、衛星へコマンドを送り、そして衛星が取得したセンサデータやカメラ画像を受信する局、「地上局」の開発が必要です。
 SPROUTではアマチュア無線帯の電波を使用し、パケット通信にて衛星へアップリンク、ダウンリンクをします。
 地上局の開発は主に、ハードウェア開発および、ソフトウェア開発に分類することができます。
 本日はハードウェアについて説明していたいと思います。SPROUTは前記のおとりの通信方式によって、衛星との通信を行うために、アマチュア無線局の設置を行いました。下の図がSPROUTの地上局の構成です。

SPROUT地上局システムダイアグラム


各機器について詳しい説明はこちらのページをご覧下さい。

地上局は大きく分けて4つの系に分類することができます。それぞれの系の機能を説明していきたいと思います。

①送信系
 送信系では、パソコンによって作成されたデータをTNC(ターミナルノードコントローラ)によって、デジタルデータからパケットデータに変換され、無線機によってアンテナを通じて衛星へ発射されます。

②受信系
 受信系では、衛星から照射された無線電波をアンテナで受け、プリアンプで増幅され、受信機で受信しTNCでパケットデータからデジタルデータによって変換されパソコン上にデータを表示します。

③衛星追尾系
 衛星追尾系の役割は2つあり、
 ① 衛星軌道解析ソフトで軌道解析結果を元にアンテナを動かし衛星の方向に向けます。 
 ② 無線機の周波数の微調整をソフトウェア上で行います。

④データベース系
 衛星へ送受信したデータを解析保存するデータベースです。SPROUTへ送ったコマンドや受信したデータの解析を行う事ができ、衛星のデータを時系列でみることができます。

日本大学地上局設備とアンテナ


 このような機能を持った、地上局を日本大学に設置しました。
明日も引き続き山口が地上局ソフトウェアの開発について説明したいと思います。

2014年05月14日(Wed): 7-2.軌道予測解析ソフト

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 16:34
Author: sprout
【SPROUT打ち上げまであと10日です!】

 みなさま、こんにちは機能に引き続き学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう! 本日から3日かけて、地上局開発にて開発した、地上局を構成している3つのソフトウェアについて説明していこうと思います。
第一回目は、「軌道予測解析ソフト]です。このソフトの役割は大きく分けて2つあります。

①周波数の微調整
 衛星は地球の軌道上を高速(秒速数km)で飛来しているので、衛星の位置や速度を予測すればドップラー効果の式を使用知れば受信周波数のずれも予測できます。しかしながら、それでも多少の誤差が残り、CWを受信する場合は、周波数のバンド幅が小さいので、受信周波数を高い精度で合わせなければいけません。そうしないと、TNCでデコードできないことがあります。
 その周波数の微調整をソフト上で行える機能を持ちます。

②衛星軌道の解析
 人工衛星の軌道は、アメリカのNORADが発行しているTLE(Two Line Element)を使用して、SPG4モデルを用いて計算することにより、衛星の軌道を予測することができます。そして、その衛星の軌道をソフト上にて表示するとこができます。なので、現在衛星がどこのあたりを飛来しているかを一目で見ることができます。また、地上局から、衛星が見える(電波を受信することができる)時間(AOS,LOS時間・方位)、その時の最大迎角を同時に算出することができ、運用の計画を立てる際に重要な情報を提供できます。
 このソフトでは、TLEをソフトに入力し、ボタンを押すことだけですべての軌道計算を行えることができきます。

実際に、SPROUT の打ち上げ当日のTLEをこのソフトウェアに入れて解析してみると、次の図のような軌跡が描けます。

SPROUTのTLE※データをもとに自作
SPROUT
1 00000U 14000A 14144.15426352 .00000000 00000-0 00000-0 0 000X
2 00000 097.8740 250.9240 0035980 058.6810 194.6460 14.85960800 01

OrbitmasterのUI


明日も、引き続き山口が、地上局のアップリンク/ダウンリンクソフトについて説明したいと思います。

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 12:21
Author: sprout
【打ち上げまであと9日です!】

 みなさま、こんにちは。SPROUTの打ち上げまで残り一桁になりました。学部4年の山口です。
 SPROUTマスターになろう! 地上局ソフトウェア二日目です。本日は、「アップリンク/ダウンリンクソフト」について説明していこうと思います。このソフトは大きく2つのパートに分けることができます。(ソフトとしては一つのソフトです)

①アップリンクパート
 アップリンクパートでは、SPROUTにコマンドを送るために、アップリンクコマンドフォーマットに則りアップリンクコマンドを作成、送信設定するとができます。

アップリンクパートUI


②ダウンリンクパート
 ダウンリンクパートでの役割は大きく分けて2つあり、
a) ダウンリンクした生データをデータベースにて解析をかけるために保存をする
b)衛星の状態を一目でわかるように簡易的に、生データをダウンリンクフォーマットに則り解析、表示をする。
 となっています。

ダウンリンクパートUI


地上局ソフトウェア作成では、良いソフトとは何かを考え、次の3つの点に留意して開発を行いました。

 ①管理性が高いものであること
  SPROUTの運用は今後数年間にわたって行われます。自分たちが卒業した後に、ソフトウェアのアップグレードや修正を行う際に、第三者がコードを見た時に理解しやすければいけなく、そのため、本ソフトはオブジェクト指向を持つ言語(WPF後述)を使用して開発を行いました。

 ②使いやすいUIをユーザに提供すること
  使いやすいUIとは何かとは非常に難しい問題ですが、本ソフトは、次の3つの点にうついて念頭に置きUIのデザインを行いました。
 a)なるべく一つのwindowでソフトを完結させ、シンプルに。
 b)UIに一貫性を持たせる。
 c)ダウンリンクパートは、設定以外ユーザの操作を必要としない。(つまりほぼ自動)

 ③汎用性の高いものであること
アップリンクでは今後機能が拡張される可能性があります。そこで、拡張性を見越すようなデザインを行いました。
 また、シリアル通信をする際のCOMポートの自動取得や、ハンドシェイクの値を変えられるために、条件を満たせばどのPCでも使用することが可能です。
 
アップリンク/ダウンリンクソフトは、WPF(Windows Presentation Foundation)というUIを作成するXAML言語と、ロジック部を作成するC#から成る言語を使用し、エディタは、マイクロソフト社が提供しているWindows Visual Studio 2012を使用して開発を行いました。今後ARS(Armature Radio Service用のアップリンクソフト、ダウンリンクソフトを公開する予定です。

明日は、地上局最終回「データベースソフトウェア」について、修士2年の藤原が説明します。

2014年05月16日(Fri): 7-5.データベース

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 18:16
Author: sprout
【打ち上げまであと8日です!】

 修士2年の藤原です。
 SPROUTマスターになろう! 地上局ソフトウェア三日目,最終日となりました.本日は、データベースについて説明します.

 SPROUTでは,今後運用していく上でたくさんのアップリンクデータやダウンリンクデータが集まります.また,ダウンリンクしたデータは1回のパスではデータでは,SPROUTのROMの中にあるデータの一部しかダウンリンクすることができないため,何回もダウンリンクを行ってSPROUTのROMの中にあるデータを収集する作業が必要となります.そこで,SPROUTのデータベースでは,多くのアップリンクデータやダウンリンクデータを管理することやばらばらで落とされてきたダウンリンクデータの結合処理を行うことが主な目的です.

データベースに関しては現在作成途中ですが,以下のような機能の実装を考えています.
・アップリンクデータ,ダウンリンクデータのSQLに保存
・いくつかのダウンリンクしたデータの結合処理
・SPROUTのデータの収集できていないROMのアドレス表示
・ダウンリンクしたデータの解析処理
・現在のSPROUTの情報を解析やアップリンク,ダウンリンクのデータを用いて表示する.
・データの検索機能
・任意のファイルを出力する機能

です.このような機能を保有することによりSPROUTの運用の効率を上げるだけでなく間違った運用をなくすことにもつながると考えています.そのため現在このようなデータベースソフトを現在作成しております.
 また,現在の運用中のSEEDSのデータベースは以下の図のようなソフトになっております.

SEEDSのデータベース


SPROUTでもこのようなソフトを作成し,また運用中もより使いやすいソフトに改良していく予定です.

2014年05月17日(Sat): 8-1.スケジュール管理

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:50
Author: sprout
【打ち上げまであと7日です!】

 修士2年の角川です。
 SPROUTマスターになろう! 本日はSPROUTプロジェクトの開発管理について説明します。

[スケジュール管理]
SPROUTプロジェクトでは主に、通信系(C&DH、FMR)、ハウスキーピング(CW)、電源系(EPS)、衛星構体系、分離機構系、複合膜面構造物展開構造系(INF)、カメラ系(CAM)、姿勢制御系(ADC)などの各班にわかれてタスクを処理してきました。

プロジェクトでは予算とスケジュールが限られているため、開発を行っていく中のそれぞれのフェーズでどんなタスクを処理することが求められているのかを考えなければなりません。SPROUT開発プロジェクトでは自分達の都合でロケットの打ち上げ日程を変更することは出来ません。そのため、SPROUTがミッションを成功させるために、何をしなければならないのかをブレインストーミングして処理すべきタスクを網羅し、そのタスクを処理するためにどのくらいの時間と、お金がかかるのかを予測して計画をたて、すべてがロケットの打ち上げ日程に間に合う様にタスクを処理していかなければなりません。

SPROUTの統合試験を行っている際のスケジュールでは、製造したFM機が実際の宇宙環境で、設計した通りに動作できるのかどうかを環境試験を通して検証を行っていくことがメインのタスクになります。この期間では主に、試験装置が使用できる日程や、個々のシステム班のタスクの進捗状況と相談して調整しながら計画を立てていきます。

しかし、実際は試験装置に不具合が検出されて、その対処に時間を要したり、システムに不具合が生じ、その対処に負われたりと計画通りに進まないこともあります。もちろん、すべてのブレインストーミングで得られた全てのタスクを完了して打ち上げに臨むことができればより成功に近づけることは間違いありません。しかし、スケジュールとコストが限られていてなかなかそうはいかないのがプロジェクトです。

そのため、スケジュール管理ではJAXAへの衛星引き渡し前までに、このタスクだけは達成しておくべきマストなタスクを明確にして優先順位を付けておくことが重要になります。SPROUTプロジェクトがどのようにスケジュール管理を行って来たかを紹介したいと思います。

SPROUTプロジェクトでは主に以下項目を駆使してスケジュール管理を行ってきました。

・進捗報告ミーティング・・・1週間ごとにチームで集まり、各班の進捗報告や、スケジュールの調整を行う

・日報・・・決められたマイルストーンに対して1週間ごとでは管理しきれないタスクに足してメールで進捗報告を行う

・A/Iリスト・・・主に各システム班のくくりでアクションアイテム(A/I)を洗い出し、いつまでに何をやるのかを明確にした表



2014年05月18日(Sun): 8-2.文書管理

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:48
Author: sprout
【打ち上げまであと6日です!】

 修士2年の角川です。
 SPROUTマスターになろう! 本日はSPROUTプロジェクトの開発管理(文書管理)について説明します。

SPROUTプロジェクトでは主に2通りの観点から文書管理を行っています。

①安全審査文書の管理・・・HⅡ-AロケットのI/F適合性審査に関する書類、安全審査に関する書類の管理を行っております。主に適合性要求、安全要求などを満たしているかどうか検証を行った結果を証明した書類です。

②SPROUT開発文書の管理・・・SPROUTの設計、試験計画・報告書、不具合報告書などの管理を行っております。

本日は、②SPROUT開発文書の管理に関して説明させて頂きたいと思います。



[開発文書の文書管理]
SPROUTプロジェクトでは運用マニュアル、各システム設計書、各システム仕様書、各種安全審査書類、各種試験計画・報告書、不具合報告書など、さまざまな文書を生成してきました(生成していきます)。また、各種試験においてはシステムの運用ログ(teraterm)や動作確認時のセンシングデータ、環境試験における試験条件に関するデータなどさまざまなデータを扱っています。

文書を管理する目的は,運用者(後世の代を含む)がSPROUTの適切な運用を行うことができる体制を整えるために、後世の代がSPROUTの開発情報を引き出すことができるようにSPROUT開発プロジェクトで生成された各種文書を整理することです。

その中でSPROUTプロジェクトチームの課題として、各システム班において、まだ文書化できていない開発情報を暗黙知的に伝承、または文書化して伝承していかなければならないということがあります。

SPROUTの開発情報が適切に後世に受け継がれないと、後半の運用フェーズにおいて開発当初のメンバーが持っていた暗黙知的な知識がごそっと抜けてしまいます。こうなると、約5年間を想定しているSPROUT運用の中では、SPROUTというシステムがブラックボックスになってしまい、後世の代が運用を行っている際に、万が一不具合が起きたときに対処できなくなってしまいます。

この課題に対して、現在SPROUT開発チームでは、システム仕様や試験結果、設計変更などの情報の、より詳細な文書化に努めています。

次回は最終回です。最後にSPROUTの今後の運用計画をお伝えしようと思います。

2014年05月19日(Mon): 9-1.打ち上げ後の運用計画

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 21:11
Author: sprout
【打ち上げまであと5日です!】

こんばんは修士2年の角川です。SPROUTマスターになろう最終日です!
本日は打ち上げ後の運用スケジュールに関して説明させて頂きます。

[打ち上げ後の運用スケジュール]
以前 4-1.運用予測において、ざっくりとした SPROUTの運用予測をお伝え致しました。今回は、もう少し詳しく、SPROUTの運用について説明したいと思います。
以下の表は詳細な運用計画です。



本日はこの中の1日目1stパス(SPROUT初期モード)について詳しく説明させて頂きたいと思います。

SPROUTはロケットから放出された後、アンテナ展開を行います。

SPROUTがロケットから放出されるとSPROUTの全システムは初期モードに入ります。SPROUT初期モードの主な目的は収納されているアンテナを展開することです。アンテナ展開機構はアンテナに拘束されているダイニーマ(釣り糸)をニクロム線で焼き切り展開する仕組みになっています。

万が一アンテナが展開しないということがあると、地上局からのアップリンクが通らず、また、ハウスキーピングデータも拾えないためSPROUTが衛星として機能しなくなってしまいます。そのため、初期モード中は、万が一、一発でアンテナが展開しなかった場合(例えば想定していたよりもアンテナ展開部のニクロム線温度が低温になってしまっていた場合など)を想定して30分に1回アンテナ展開機構がニクロム線を加熱することを繰り返すようになっています。

無事に地上でハウスキーピングデータを所得できて、アンテナが展開されていることが確認できたら、地上局からSPROUTにコマンドを送ります。

このコマンド(SPROUTが衛星放出後初めて地上から受けるコマンド)をトリガーとして、SPROUTは初期モードから通常モードに遷移し、30分に一回行っていたアンテナ展開をやめます。以下の図はSPROUT初期モードのシーケンスを図にしたものです。どのサブシステムが何をトリガーにして動作を行うのか、サブシステム間の相互作用を明確にした図です。



このようにして、地上局とSPROUTとの通信が確立されます。このあとは順次衛星の機能健全性を確認して行く計画となっております。



2014年05月19日(Mon): 9-2.アウトリーチ計画

Category: SPROUT Master on SPLOG
Time: 23:30
Author: sprout
【打ち上げまであと5日です!】

こんばんは.修士2年の上原です.SPROUTマスターになろう最終日のおおとりを任せてもらいました!本日は打ち上げ後の運用スケジュールに関して既に角川から説明させていただきました.私からはSPROUTのアウトリーチ計画という視点で運用計画をお話しようと思います.

SPROUTが初期運用を終え,衛星の機能健全性を確認していくフェーズでは私たちの工学ミッション機能と並行して,アマチュア無線ミッション機能も段階的に確認運用していきます.平日は,主に工学ミッションデータのダウンリンクや各機能確認をし,休日(土日)は,アマチュア無線ミッションを受信,交信していただこうと考えております.ただ平日休日限らず,CW/FM運用で衛星の基本データ(ハウスキーピングデータ)のダウンリンクを行いますので,いつでも受信は行っていただけるようになります.全体運用シーケンスからみたアマチュア無線ミッションとしては,以下のように段階的に開放するスケジュールを計画しています.

■アマチュア無線開放フェーズ1
 デジトーカ,SSTVダウンリンクを実施致します.
■アマチュア無線開放フェーズ2
 音声・音声メッセージボックスアップリンク・ダウンリンクを実施致します.
■アマチュア無線開放フェーズ3
 地球撮影シャッターアップリンク,地球画像SSTVダウンリンクを実施致します.

→各アマチュア無線ミッション機能の詳細はこちらのページへ.

ここまで読んだだけでは「アマチュア無線といえど,敷居が高いなぁ.私では無理だなぁ.」なんて思う方がほとんどではないでしょうか.ですが,実は衛星の電波を受信するだけであれば,無線免許は必要としないため,一般の方にも衛星からの電波を受信してもらうことができます!
宮崎研究室では2008年に打ち上がったSEEDS-II(CO-66)や缶サットとともに多くの方に宇宙をもっと身近に感じてもらえるよう,興味を持っていただけるように草の根的な活動を積極的に行っています.
様々な宇宙イベントやハムフェアでの展示,JAMSATシンポジウムでの発表,UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)への参加,小中高生を対象に手作りアンテナを製作し,衛星の電波を受信するイベントも開催しています.

また,SPROUTではマイクロメッセージプロジェクトという企画も行い,一般の方から宇宙へ向けてのメッセージや写真などを応募しました.

→応募メッセージギャラリーはこちらのページへ.

アウトリーチ活動は開発や研究とは違った視点で”宇宙”や”工学”について考えるきっかけを与えてくれる有意義な活動であると思います.SPROUTが無事宇宙から電波を出し続けてくれるようになれば,SEED-II,SPROUTの電波を受信するイベントや宇宙イベントでのSPROUTのEM(エンジニアリングモデル)の展示など今後の宇宙工学分野へ関心を持っていただけるよう精力的に活動していきたいと考えています.

皆様,約一ヶ月に渡った「SPROUTマスターになろう!」ですが,内容はぎっしりでしたので,最後まで読破してくださった方は,もう”SPROUT”を語れる?レベルにいると思います!
明日からは,打ち上げ直前準備の様子や研究室の雰囲気など書いていきたいと思います.